がんと向き合う

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高田 由香 さん
(たかだ・ゆか)
静岡県立 静岡がんセンター
疾病管理センター よろず相談 社会福祉士
日本女子大学にて社会福祉学科を専攻。肢体不自由児療護施設、リハビリテーション病院、一般病院の勤務を経て、2003年より現職。「がんでつらい思いをする人をなくしたい」と、予防や検診を広める啓発活動にも力を入れている。リレー・フォー・ライフというがん患者支援活動にボランティアとして参加。
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相談例5 緩和医療への移行を告げられた場合
Q.担当医より、緩和医療への移行を告げられました。治療はもう何もしないのでしょうか?

高田 「はい、よろず相談の高田と申します。」

相談者(患者本人) 「今いいですか?」

高田 「はい、大丈夫ですよ。」

相談者 「私、もうだめなんだって。緩和医療と言われたけど、もう何もすることないんでしょ?」

高田 「今、がんの治療をなさっている方ですか?」

相談者 「はい。」

高田 「こちらのセンターにかかってらっしゃいますか?」

相談者 「はい。」

高田 「そうでしたか。お体もちょっとつらかったりしますか?」

相談者 「今はいいです。」

高田 「緩和医療ということで、先生からは何かお勧めがあったのですか?」

相談者 「いろいろ言われたけど、結局なんにもしないで、あと死ぬのを待つだけなんだな・・・って。」

高田 「そういうふうに思ってしまったのですか。」

相談者 「はい。」

高田 「今、お体でつらいところは特にないとおっしゃっていましたね。」

相談者 「はい。でも寝られない。」

高田 「そうね・・・。眠れないことも、つらいことですよね。」

相談者 「怖くって。」

高田 「でもそういうつらい気持ちを全部ひとりで抱えている必要はないのですよ。」

相談者 「はい。」

高田 「それを和らげてくれるところが、緩和ケアというところですから。眠れなくてお体がつらかったときは、少しでもお体が休めるように、どうしたら眠れるかということを一緒に考えてくれるのが、緩和ケアの先生たちですから。これから緩和ケアというところに、もし移ったとしても何もしないわけではないですよ。必要な治療はしますので、何か痛かったりつらかったり、あるいはこうして眠れない、気持ちがつらい、というときも和らげていくのが緩和ケアです。」

相談者 「ありがとう。」

高田 「私、こちらの相談室の高田と申します。またお電話いただくか、こちらに来たときにぜひお寄りくださいね。」

相談者 「はい。」

高田 「はい。失礼します。」


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解説●緩和医療

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患者さんが感じるさまざまな痛み
高田 「緩和医療は、がんの告知を受けた時点から始まると言われています。たとえば体で感じる痛みやつらさ、心で感じる痛み、社会的な役割が果たせないことのつらさ、あるいはなぜ自分がこういう病気になったのだろうというやり場のない思い、そういう複雑なつらさや悩みを患者さんは抱えられます。そういうものを少しずつ取り除いて緩和していくのが緩和ケア、緩和医療ということになります。

ですから、がんの治療が始まった時点から少しずつそういうものが、本来は取り入れていかれるべきものなのです。今はだんだんそういう形になってきましたので、治療中から緩和医療を並行して受けていく方も多くなってきています。」

Q.病気のことで気分が落ち込んで仕方がない場合は?

高田 「心と体はかなり一体化していますので、体調が悪いときは気分が沈んだり、先行きの不安を感じたりすることは誰でもあることですが、なかなか自分で自分の心をコントロールできないという状況が出てきたり、それだけのパワーが治療中の患者さんに出てこないときもあります。

そういうときには専門家の助けが必要になってくると思うのです。緩和ケアチームには精神科の医師、あるいは臨床心理士、心のケアをする専門家もおります。そうした医師、看護師とチームを組みながら、心のケアも一緒にしていくというのが、今の緩和ケアのスタイルになっています。」