がんと向き合う

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豊 秀之さん
(とよ・ひでゆき)
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神戸市在住。美容室経営。2008年、46歳のときに直腸がんが見つかる。4つ目の病院で、直腸がん切除術を受ける。一時的に人工肛門を設置。ステージは2b。「こんいろリボンの会」を作り、医療用かつらを置く台を全国の患者さんに無料で提供するほか、大腸検査の重要性を呼びかけている。家族は妻と娘。目標は、いつかホノルルマラソンに出ること。がん患者団体支援機構理事。
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4人工肛門について

「入院する前は、僕がちょっと何か暗い顔をしていると、周りの人が半分冗談めいて『今、人工肛門のこと考えてるな・・』と言うくらい、人工肛門がいやだったんですけど、なった瞬間はもう開き直りましたね。逆に不思議でした。お腹を見て『へぇ〜〜??』と思いました。ここから(便が)出るんだ・・みたいな。今は、もう5ヵ月くらいになっているのですが、もう普通に違和感がないというか、このままでもいけそうなぐらい、なんてことなくなりましたね。慣れですね、やっぱり。」

●人工肛門で工夫していること(1)
 パウチのサイズを調整する

「(人工肛門は)神経質になる面とそうじゃなくていい面があると思います。お腹の中からちょうど唇がキューと飛び出しているようなのが出ているのですが、それがお腹いっぱいになると中から押し出される感じでギューっと大きくなります。病院の抑え気味の食事をとっていると、そんなに大きくなったりしないのですが、退院してちょっと調子にのって食事をすると、すごい出てきたりするのですね。そういうところまでは、入院している間はやっぱりわからないのかな。

いろんなパウチ(便をためる袋)があると思いますが、サイズを調整できるものがいいですね。サイズは自分で切って調整します。たとえばハサミも、看護師さんはあまりお金を使わないほうがいいと思って『お家にあるハサミでいいよ』と言っていただいたのですけど。僕は、先がアールになっている(丸くカーブしている)3000円ぐらいのハサミを買ったのですね。お家にあるハサミと言ったらほとんど、まっすぐのものしかないじゃないですか。でもそういう丸いのがあったら欲しいなと思って僕は買ったのです。一度そのハサミがないときに、まっすぐのハサミで切ってみたら、もうね、うまく切れないんですよ。それで今は、絶対あのアールのハサミは『使ったほうがいいですよ』と看護師さんも患者さんに言ってあげて欲しいなと思いますね。3000円だったら高くないかな。ぜひ買ってください。」

●人工肛門で工夫していること(2)
 パウチを指でなめす

「お腹の形が人によって違うと思うのです。僕なんかはお腹が出ていて、人工肛門のあるところはその他のところよりももっと丸くなっています。ぽこっと何かりんごが入ったようなお腹の形をしていて、その先に人工肛門がこう出ている。パウチはまっすぐなので、ちょっと指でなめして丸みをつけてあげてから着けると、それほど突っ張らないのです。いちおう私は技術的なお仕事をしていましたので、そういう工夫をするのが好きというというのもあるのですが。なめして丸みをつけてから、お腹がへこんでいる人だったら逆にそわしてから貼ると、きっといいと思います。」

●外出時のトイレについて

「元気なときは、トイレに行きたくなるとトイレを探すのもたいへんでしたが、今はもう逆にそれがなくなって、勝手に袋にたまっていくので便利なときすらあるというぐらいです。

匂いはやっぱり途中で出てくるので、普通よりは強烈な匂いがすると僕は思っています。普通の便に胃酸を混ぜたような酸っぱいのと何か混ざった匂いですね。だから、なるべく人のお宅でトイレを借りるのはちょっとしにくいな、というのはありますね。

特に和式になると、かなりしゃがまないと駄目なんですね。洋式でも膝をつくくらいの感じになります。立ったままで、普通の洗面台ぐらいの腰の高さの便器が設置されているのが、オストメイト用のトイレですね。テーブルぐらいの高さで、そこで便をほかして(捨てて)、立ったまま処理ができるというものです。本当に使いやすくなっていますね。自宅はそこまではできないので膝をついてやっていますが、逆に近所の大型電気屋さんとか新幹線の駅などは、最近そういうオストメイト用のトイレが付いていますので、そういうところに行くと、まだ処理しないでよくても、『ついでにやっとこ』みたいになりますね。」

●夏場の苦労

「毎日このパウチを交換します。2日用とか3日用もあるのですが、特に夏場はもう毎日変えないと気持ちが悪いので、毎日変えます。毎朝必ずシャワーを浴びるとか、生活面で変わってきたことはもちろんあります。パウチはバンドエイドのちょっとゆるいようなものが付いていて、汗をかくとはずれそうになるのです。一度ちょっと漏れたことがあり、それが恐いので、もう毎日必ずお風呂に入れる環境を意識して作っています。旅行に行っても絶対、部屋にお風呂があるところを選びます。昔だったらカプセルホテルとかに泊まったこともありますが。今はもう皆で入るお風呂というのは入れないので、大型のスーパー銭湯とかそういうのにはもう今年は入っていないですね。入りたいです。

3週間くらい前に香港に行ってたのですが、暑くてやはり夏は行けないなと思いましたね。自宅ではないので、トイレがどこにあるのかとかわかってるところじゃないと、苦労しますね。あとやはり空調です。空調が整ったところじゃないと、人工肛門をつけられている方はたいへんだと思うので、会社にそういう方がもしいらっしゃるんだったら、そういうのが整った環境を作ってあげて欲しいです。

でも本当に人工肛門をつけていても、トイレを処理するときに匂いが少しするかなというぐらいで、あとは何の問題もないと思うのですね。だから、特に仕事は普通にできると思いますね。」