がんと向き合う

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豊 秀之さん
(とよ・ひでゆき)
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神戸市在住。美容室経営。2008年、46歳のときに直腸がんが見つかる。4つ目の病院で、直腸がん切除術を受ける。一時的に人工肛門を設置。ステージは2b。「こんいろリボンの会」を作り、医療用かつらを置く台を全国の患者さんに無料で提供するほか、大腸検査の重要性を呼びかけている。家族は妻と娘。目標は、いつかホノルルマラソンに出ること。がん患者団体支援機構理事。
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8心の持っていき方

「患者は、この先生と決まったらある程度先生を信頼するしかないじゃないですか。僕は、信頼するという気持ちがいい方向に行くのかなと思う患者なんですね。信頼できなかったら、もういやいや手術もしないと駄目だし。だからとにかく信頼して、決まったらもう信頼するというのがいいのかなと思うのと、あとは信頼しながらどこかで開き直るみたいなところですよね。なるようにしかならないと楽観的にすると、意外とうまいこと行くような、何か見ていてそんな感じがすごくしますね。

結局、明るい人って明るく退院して行くんですね。嘘でも開き直って笑っているほうがいいのかな。入院中も『わしはなぁ、8回目なんやぁ』と言う方がいて、明るいなぁと思って。そういう人には脱帽しますわね。だから逆に僕なんかはそういう方に学ばしてもらったなと思っています。僕なんかもう本当にがんでも駆け出しのひよっ子やなぁと思います。

自分の主治医の先生がパネラーで出るという講演会に、あの朝のテレビによく出ている男性キャスターの方(鳥越俊太郎さん)が出てられて、その人の話が本当に『僕はもう3回切ったんだよ』と、すごく明るくて力強かったんですね。闘うというよりも『もう全然気にしてないよ』という感じさえ受けたので、あぁどうせやったらこんなことを言える人になりたいなと思って。それも僕の中では影響が大ですね。」

●病気になって気づいたこと

「何のためにこんな俺だけなるのかなと思って。でもそれがこうやってまだ生きているってことは、何かこういうこともちゃんとやらなあかんとか、身体も大事にせなあかんて気づかしてくれたのかな、といろんなふうに思いだしました。たとえば親からもらった身体じゃないですか、母親がいないから余計に、母親のためにもこの身体を大事にしようとか。なんでそういうほうに変わってきたかと言われると難しいんですけど、勝手にそう思う、思えるのが病気なのかもしれないですね。」

●がんは精神修行

「知り合いでもリンパ(への転移)が不安の人とか、再発しとったとか、再発が本当にショックというのを聞くので、どこかで『来るんやったら来い』くらいの気持ちをもちながら、『大丈夫』と思ってますけどね。そのへんの精神的なことばかり考えていてもしょうがないし、大丈夫と思って忘れていても、急に来られたら恐いし。何か『来るんやったら来い』と思いながら『大丈夫』と思う、そういう自分の心のバランスをとるのが、何かこうすごく面白いというか。

やはり鳥越さんなんかを見ていると、そのへんの心の持っていきかたがすごく上手やなと思うんです。整理をしっかりできている。だから何か病気をする、がんになるというのは、精神修行じゃないけど、すごくそういうようになるんだろうなという感じがします。おぉ・・そう考えるんや、と。

健康診断でちょっと血をとるのでも『ごめんなさい』とか言ってたんですけど、大きい手術をしたらそういうのがなくなりましたね。『血やったらどうぞ』みたいな。強くなりました。」