がんと向き合う

大腸がん 小腸がん 肺がん 膵臓がん 乳がん 子宮頸がん 卵巣がん 緩和ケア +plus イベント おしらせ
臼井 和子さん
(うすい・かずこ)
声楽家
chart
日本の音大声楽科を卒業後、1979年フィレンツェに留学、以後イタリアに在住。2005年、日本に一時帰国中に腹痛・発熱で病院を受診。S 状結腸がんが見つかり手術を受け、その後イタリアで術後補助化学療法を受ける。副作用に苦しむが家族やがん専門心理学者の支えもあり、半年間の抗がん剤治療を終える。現在手術から4年が経過し、チャリティ・コンサートなどを積極的に行っている。
movieImage
7イタリアの医療保険制度

「(イタリアで)国民健康保険にちゃんと入っています。入院した場合、手術費とかは全部無料です。主治医のところに診察を受けに行って、処方箋を書いていただいて、『ここに行きなさい』と専門医のところに回されるのです。

私の場合はがん患者なので、確か2011年10月までは、すべての検査費と薬品類は無料という特別な配慮のランキングに入っています。がんの先生が定期的に『こういう検査を受けて来てください』と処方箋を書きます。そうすると、フリーダイヤルで予約をします。そして自分のランキングの番号を言うと非常に早いのです。検査でも『どこどこ病院に何月何日に行ってください。血液検査の結果と、以前のエコーやなにかを全部持って行ってください』と言われます。同じ所でいつも同じ検査を受けるのではなくて、いろんなところに回されるのですが、検査には非常に早く回されるので、それはとても楽です。」

●がん研究費を募るチャリティ・イベント

「がんの種類によってアソシエーション(協会)があり、研究費を集めるチャリティ・バザーがよくあります。そうすると、テレビなどに権威のある専門の先生が出てがんについての説明をされて、『研究費が必要なので、皆さん募金をしてください』と言うのです。イタリアの各町で、たとえばつつじがすごくきれいなシーズンだと『鉢をひとつずつ買ってください』とか。

何年か前に世界的に有名な3大テノールのひとり、ホセ・カレーラスが白血病にかかって、アメリカでたいへんな治療をされて、すごく痩せました。しかしそのあと復帰されて、私もチャリティ・コンサートに1度行ったことがありますが、その白血病のために彼は運動を起こして、かなりの研究費を集めました。当時自分の状態がどうであったとか、でもこういう病気は治るんだとか、がんばって生きられますよと発表されたことは、今でも非常に印象に残っています。」

●先生と家族の支え

「自分が生きる意思を失くしたら病気に負けてしまう、精神力はものすごく大事だというのは、医者からも言われました。それと10何年間、何回も何回も繰り返してがんばって治療を受けている人を見たときには、やはり精神力と家族の支えもあるのだなと感じました。一緒に来ていた奥さんを見たときに、そういう温かさを見たから、家族によって支えられていると思いました。

あと先生にすごく信頼感を置いているというのは100%あったと思います。自分でいろんな情報を集めるということは、私自身はしなかったのです。うちの主人が結構インターネットからいろいろな情報を得て、本もいろいろ読んでいたのを記憶しています。でも私自身は言われるがままというよりは、先生の言うことをちゃんと信じるしかない、それを信じるのがいちばんいいと思ったのと、そのほうが精神的に安心するので、そちらを信じるほうが多かったと思います。」