がんと向き合う

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川守田順吉 さん
(かわもりた・じゅんきち)
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北海道江別市在住。印刷会社の総務部にいた58歳(1999年)のとき直腸がん(ステージ3b)が見つかり、手術を受ける。人工肛門を造設し、術後は抗がん剤を3年間服用。好きなバッハと写真にうちこむうちに気持ちが慰められ、退職後は近隣の図書館や大学でボランティア活動を始める。2004年、新たにS状結腸がん(ステージ3a)が見つかり手術を受け、術後は抗がん剤を8ヵ月間服用。患者会「江別わかくさの会」会長。
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4職場に復帰

「手術をしたのが11年前ですから58歳のときです。定年が60歳でしたから、(術後も)2年間フルに勤務しました。

病院では私なんて単なる何十人、何百人の患者のうちのひとりですよね。一方、看護師さんはいつでも『1対1』で対応してくれるのです。ですから『人と接するというのはこういうことか』と思いました。

(私が所属していた)総務というと、いろんな種類の相談ごとが持ち込まれるところですから。今までなんとなく交わしていたのを、やはり『1対1』ということを心掛け、とにかく明るく『よろず相談窓口』というのをやりました。忙しかったけれども、最後の頃は仕事の面ではかなり充実していました。

『がんの治療をしているって聞いたけど、なんでそんなに明るくしていられるのよー』と会社で言われたのですよね。『(自分には)立派な先生と看護師さんがたくさんついているんだ』と言って。やはり総務みたいなところで陰気な顔していたらだめですからね。陰気な顔している人に相談しようとする人はいないでしょうから。」

●職場のトイレ

「工場の中は和式のトイレがほとんどで、洋式のトイレはひとつしかありませんでした。洋式のトイレであれば何とか始末はつくのですが。当時会社がものすごい赤字で儲かっていなかったので、自分のためにトイレを改造してほしいとはとても言えなかったです。ですから、その洋式のトイレだけを使わしてもらいました。

通常、パックにたまったものを出す分には洋式トイレでも十分に用は足ります。しかし本当に困ったときは、シャワーで患部をきれいにして新しいパウチをつけるために、温水シャワーがついていないとどうしようもないと思うのです。そういうときは仮にパウチをつけておいて、一刻も早く家へ帰るということになるでしょうか。」

●何が障害なのか

「企業は、身体障害者の人を1.6%は採用しなければいけません。会社に(身体障害者の方が)何人かいるのですが、身体障害者には、あまり好きな言葉でないのですが『健常者』と同じように接するという感覚でした。しかし自分がいざ障害をもってみると、決してそういうことではなくて、『その障害の事実をまず把握して、それに基づいて作業の仕方や環境をきちんと作る』ということだと気がつきました。

それで、足の不自由な人で杖をついて歩く障害者の男性が会社にいたのですが、玄関のエレベーターのいちばん近いところに駐車場を作りました。やはり障害者の人とうまくコミュニケーションをとり、安心して仕事をしてもらえるように、退院して早速、障害者職業生活相談員という資格認定制度の講習会を受けて、一応お墨付きをもらいました。どこまで役に立ったのかは疑問ですが、できるだけ機会をつかまえてプラスになるようにしたつもりです。」

●非常時の心配

「今心配なのは、この地区はほとんど災害のないところなので、収容避難所にオストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)対応のトイレがほとんどないということです。水が止まってしまったらもう何もできませんけれども、水が出る状態で収容避難所にいるときに、対応のトイレがあると、ずいぶんオストメイトの人たちは助かると思います。」