がんと向き合う

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工藤裕美子 さん
(くどう・ゆみこ)
ブーケ(若い女性オストメイトの会)代表
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姫路市出身。23歳(1988年)のとき直腸ポリープ切除後、直腸がんと診断され、手術を受けて人工肛門を造設。退院後、仕事や妊娠・出産など女性のオストメイトの悩みを相談する機会や情報がないことを痛感。1999年に仲間と患者会(ブーケ)を作る。年3回会報誌を発行、「どんな状況でも直接手にとって読むことができるものを届けたい」という思いで全国の会員に発送している。
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7再就職

「そのヘルパー的な仕事を離れることになり、仕事を探そうと思ってハローワークに行きました。障害者窓口に行って『仕事を探したい』と話をすると、同じ町内に現場事務所で1年5ヵ月と期間の決まっている仕事があり、『これだと楽かな』と思いました。まだ正社員で働くことに自信がなかったのと、期間が決まっているというのも魅力で、しかも事務職だったのでいいかなと思い、何も考えずに『じゃ、ここに行きます』と言って決めました。

それがゼネコンの現場事務所だったのですが、所長もすごくいい人で、一応病気のことはハローワークのほうから話が行ってわかっているはずなのですが、面接のときも別にあえて何も聞かないし。『いつから来られる?』と所長と人事担当者とで面接してくれたのですが、すごくいい感じで話が進み、採用になりました。

現場事務所だからそうだったのですが、トイレが仮設ということを何も考えていませんでした。なんとかなるかなと思って。昼間は皆ほとんど出て行き、事務所にひとりでした。ストーマから音が鳴っても、誰もいないと気にしなくていいし、すごく楽でした。」

●引き続き、事務所に就職

「そのあとは、事務所の下請の業者さんが『今度組合を作るから、そこの事務をしないか』と言ってくれたのですね。場所もすごく近かったので行くことにしました。最初は病気とストーマのことも言ってなかったのですが、仕事に行き始めてからしばらくして、一応理事長には言っておいたほうがよいかなと思って、『私、直腸がんになったことがあるのです』と言いました。すると『(ストーマの)袋つけとんか?』と言われて、そう言われるとは思わなかったので『あれ?』と思いました。理事長の奥さんが乳がんをされていて、がんのこともわかっていた人なので、知っていたのかなと思うのですけど。でもわかりやすかったので『まあ、そうです』と答えました。だからといって別に何もなく、仕事も普通にさせてもらえてすごくよかったです。トイレは仮設でひどかったのですが、途中でちゃんと洋式のいいのに変えてもらえました。」

Q.“ひどい”とは、どのようなトイレだったのでしょうか?

「工事をするときに置いてあるトイレありますよね。夏だと薬を入れないと虫が上がってくるような、そんなトイレだったのです。それは事務所の外にあったので、裏にあったローソンからお客さんが回って来て使っていたりして、『ここでは排泄物の処理なんてできないな』というようなトイレでした。どうしようもないときやちょっと調子が悪いときは、家まで車で5分くらいだったので、事務所の鍵を閉めてしまって家に帰っていました。」

●トイレはどこでも大丈夫

「最初、手術したときに私はストーマケアのことを教えてもらっていないので、自分でどんなふうにもできたのですね。便の捨て方とかを看護師に教えてもらっている場合は、『ケアはこうしないといけない』とか、『トイレは洋式じゃないと無理』とか言う人がいるのですが、何も教えてもらえなかった分、かえって和式でも洋式でもどこでも大丈夫というのがあって、その点は楽でした。

『オストメイト対応トイレ』は、漏れたときや装具が外れたときにすごく助かります。汚物流しもちょうどの高さのところでできるし、シャワーもついています。外出先で漏れたりすることもあるので、何かあったときにはそういうトイレに行きます。」