がんと向き合う

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河崎睦美 さん
(かわさき・むつみ)
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1962年長崎県生まれ。3〜4年ほど痔の症状があり、48歳(2010年)のとき思い切って肛門科を受診、直腸に絨毛(じゅうもう)腺腫が見つかる。病理検査で悪性と診断され、直腸を切除、人工肛門を造設する。手術から約1ヵ月半後に保育士の仕事に復帰。自分が内部障害者となり、保育園の障害者・家族の気持ちにより寄り添えるようになる。万歩計をつけて散歩するのが楽しみ。コーラス歴17年。
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7支えてくれた人々
●一緒に歩んでくれた夫

「ストーマのことも最初は夫のほうがよく知っていました、変な話なのですけど。すごく勉強家なので一所懸命調べて、最初に退院した頃、ストーマを貼り替えるときにもやってくれたりしました。今は自分でやっていますけど、最初は全然できなくて『どうするんだ?』という感じだったので、本当に支えられました。

向こうが一気に先に落ち込んだから、こっちが落ち込む間がないという感じで。でも向こうも気持ちを切り替えてからは本当に支えてくれましたね。お医者さんに『わがままだ』と言われたときも、私と一緒になって怒るのではなくて、ものすごく冷静に対応して『まぁまぁ』という感じで。私が『もう・・・』と言っているのに、『まぁ仕方ないよ』と言ってくれたので、その辺は『すごくよかったな。家族がいて結婚していてよかったな・・・』と思いました。」

Q.家族が勧めるセカンドオピニオンを受けなかった理由は?

「そのとき本当に体がしんどくてしんどくて、またあの検査をもう1回するのはもういやだというのがありました。あっち行ったりこっち行ったり、病院に行くのももういやだし、待たされるのもいやだし。せっかくここで“2週間後に手術”とすぐに決まったので、『もうこの先生との関係を作ろうよ』というのが私の中ではあったので。どこに行けばいいのかもわからなかったし、(夫は)いろいろ調べてはいたみたいなんですけど。

多分、私がそうやって言い出したら聞かないというのがあるのではないですかね。そこで本当に彼も腹をくくったというか、『じゃ一緒にがんばろう』という感じで気持ち切り替えてくれました。」

●長男、次男
Q.遠くに住んでいた2人の息子さんには、病気のことをどのように伝えたのですか?

「笑い話なんですけど、アメリカにいた長男には電話して、『お母さん実はこうこうこうで、がんで手術するんだよ』と言うと、しばらくしてから『ねぇねぇ、“お母さん”て、僕のお母さんのこと?」と言い出して、『はぁ?誰だと思ったの?』と言ったら、『お父さんのお母さん、おばあちゃんのことかと思った』と何かピーンときていなかったのです。私が本当にいちばん元気で病気からいちばん遠い人だったから、まさか病気するとは思わなかったみたいで『え?僕のお母さん?You?』『そうそう私だよ、何言ってるの』みたいな感じでした。それからは心配してメールをくれたり、去年帰国したときも『大丈夫なの?』と気にしてくれたり。

次男はちょうど夏休みで帰っているときに、私が吐き気がすごかったり食べられなかったりしているのを見ていたので『お母さん病院に行ったほうがいいよ。おかしいよ』と彼は言っていました。一応、医学生でちょうど絨毛線腫を習ったばかりだというので、『こうこうこうだから』といろいろ説明してくれて、『ほとんどが良性だから大丈夫』と最初に言ったのですね。『じゃ、放っておいてもいい?』と聞くと、『いや、放っておくとがんになるんだよ』と言われました。実際もうがんになっていたのですけど。

手術のときも、『テストがちょうど終わったから』と高知から1日だけとんぼ返りで駆けつけてくれて、主人と一緒に手術のあとの説明も受けたみたいです。次男があんなに役に立つ、頼りになるとは思わなかったです。彼は本当に冷静に受け止めていて、ストーマも見せると『うわぁ、本当に腸だ。こうなっているのか』と言っていました。『お父さんのことも支えてあげてね』と言って、主人もいろいろ聞いたりしていました。

長男は長男なりに心配して、彼は本当に人間的に心配しているという感じですね。」

●患者会ブーケの仲間

「ブーケは2010年の秋ごろに知りました。とにかく、どこかにはつながりを持とうと思って入りました。生活していくうえで『漏れたらどう対処するか』とか『夏にかぶれやすいときは』とか『服の着方はこうすればいいよ』とか、本当にこんなこと?というような生活に即した情報がいっぱいちりばめられていて、病院では絶対にわからない、当事者でないとわからない些細なことなんですけど、『なるほど・・・』ということがわかるので、入りました。実際に送られてきた冊子はすごく丁寧で、『そうそう。これ知りたかったんだわ』という話がいっぱいちりばめられていて、本当に助かりました。」

●落ち込まなくても大丈夫

「『ストーマになってまで生きていて、何かいいことあるのかな』と思うことも実際にあったのです。だから多分、いきなりストーマと言われるとそう思う人もたくさんいると思うのですけど、実際ストーマになってみて、私の場合、生活は変わらなかったし、なんでもできるし。だからそう落ち込まなくても大丈夫だよということと、本当にブーケに出会って『この人たちがいたら何かあっても助けてくれるかな、全国にいるし』と思えるので、そういう仲間を見つけて『一緒にがんばろうよ』ということですかね。」