がんと向き合う

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武藤 勇 さん
(むとう・いさむ)
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岡山県出身。41歳(1986年)のとき家族性大腸ポリポーシスによる大腸がんと診断され、大腸を全摘出、ストーマ(人工肛門)を小腸に造設。60歳でガソリンスタンドの経営を退き、人生を探す旅を開始。2010年旅先の北海道で感じた思いから、牧師になることを決意。自宅を「フリースペース風曜日」として開放、お年寄りから若い人まで多くの人が交流する場となり、自身の使命を追求する毎日。
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5術後の経過

「術後の説明は、『小腸の終わりのあたりから(大腸を)切除した。できるだけのものは取った。しかし小腸にいくらかポリープは残っている。小腸に残ったポリープは悪性にはまず変わらない』と。家族性ポリポーシスの大腸ポリープは必ず悪性のものに変わるようですけど、小腸のポリープは『心配はないだろう』と。経過観察をして、一緒に生きていくということです。ただイレオストミーの場合は、十二指腸の乳頭部にポリープができやすいので『それは注意していきましょう』ということで、年に1回は胃カメラを入れて、十二指腸の乳頭部の検査を続けています。」

●痩せた体

「食事は全く摂れなくなって、喉を物が通らないから、IVH(高カロリー輸液)の点滴をしていました。喉を食べ物が入らないとどんどん痩せて、本来62キロあったのが45キロぐらいにぐっと痩せてしまって、病院でシャワーを浴びるときに、自分のお尻を鏡で見ると本当にもう肉がない。80歳ぐらいのおじいさんのお尻。痩せた体を見てもう涙が出るほどでした。そして10日間、全く動けない状況で歩けなかったから、本当に筋肉が衰えて、歩くのも歩行器が要りました。今は(手術後は)『すぐに動きなさい』と動かされるようで、当時も『はよう、歩け』とかいろいろ言われたんですけど、10日間寝ているとなかなか・・・。いきなり歩くのがちょっと難しかったのを覚えています。」

●退院間近に腸閉塞

「重湯から二分粥、三分粥、五分粥とだんだん普通食に戻る途中に、『自分はもう元気になった』と思って、意識は元気。ところがまだ内臓は赤ちゃんの状態というか、これから徐々に慣らしていかなければ普通食は食べられないのに、もう退院が間近だと思って、何を食べたんだか、果物を口にした。そうしたら、まだそんなものを食べてはいけなかった。それが原因で腸閉塞になり、物が下に抜けない。たいへんな思いをしてなんとか抜けて、振り出しに戻ってまた重湯から始めて、それでちょっと入院が長引いた。自分では元気になったと思っても、内臓はそうじゃなかったんだなと、病気を通していろんな勉強をしました。『思い上がってはいかん、謙虚になりなさい』ということを学びました。」

Q.今、食事で気をつけていることはありますか?

「術後間もないころは、本当によく神経を使いました。こんにゃくはよけるようにして、本当に詰まりそうなものはもう口にしない。もやしとか、いろいろありましたけど。今はもうなんでも食べますね。本当においしい。」

Q.ストーマに慣れるのにどのくらいかかりましたか?

「2〜3年はかかったのかな。肌が荒れるとか。ないはずの肛門が便意をもよおして、出そうで出そうで困ったこともありました。

でもだいたい20何年やっていると、要領というか『こんなときにはどうすればいいか』というのは、自分で体得している。」

●体力の回復

「退院してから半年、『重たいものをさげられるだろうかな・・・』と思って恐る恐る一斗缶をさげ、今度は『ガスボンベもさげれるかな、これもさげられる』と、慣らし運転で半年ぐらい。1年ぐらい経ってからドラム缶も転がすことができたりして。もともと体力には自信がありました。」