がんと向き合う

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川崎 優子さん
川崎 優子さん
(かわさき・ゆうこ)
兵庫県立大学看護学部助教。専門はがん看護、遺伝看護。日本緩和医療学会の緩和ケア普及啓発事業『オレンジバルーンプロジェクト』の事務局を担当。週に1度、兵庫県立がんセンターのがん相談支援センターで相談員をしている。
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5癒しの重要性

「病院の看護師と大学のスタッフが連携して、がん患者さん向けのグループ療法に研究として取り組んだことがあります。そこでは、患者さんがご自分のもっている力や、セルフケア能力を高めるための4週間のプログラムを考えて、患者さんに参加していただきました。

そのときイメージ療法や、光と音による芸術療法といった癒しのプログラムをなかに入れました。(プログラムで得た)知識が患者さんのなかにぐっと収まるためには、知識が入る余裕を作る必要があります。そのために(癒しのプログラムで)まず自分のがんと対話してみて、自分の感情を見つめ直してみます。そうして明らかになった感情やストレスにどう対処したらいいかを身につけることで、プログラムで得た知識が自分のものとして入ってくる余裕ができます。それがセルフケアの向上につながったのではないかと考えています。」

●がんと対話する

「患者さんは『自分のなかにあるがんは悪いもの』というふうに思いがちです。『これがあるから自分の生活が妨げられている、悪いものは叩こう』となります。ところがグループ療法を行った患者さんは、自分のがんと対話することで『がんがあってもいいと思えるようになった』とか、『がんがあっても、悪さをしない限り一緒に生きて行ったらいいのではないか』、『今まで長年一緒に生きてきたので、何かちょっとかわいいものに思えるようになった』と、気持ちに変化が起きたのです。

グループ療法を始めて4週間後にそれが患者さんから読み取れたときには、患者さんが『体のなかにある悪いものをなんとかしなければいけない』、『闘わなければいけない』というしがらみから解放され、患者さん自身の免疫力が高まることにつながり、患者さんのエネルギーになったのではないかと思いました。これは西洋医学的な薬によるがんの治療だけではなく、プラスアルファの部分として必要な介入ではないかと思っています。」