がんと向き合う

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山内 梨香さん
山内 梨香さん ①
(やまうち・りか)
看護師
盛岡市在住。2005年末、32歳のときに乳がんと診断される。手術後、骨と肝臓に転移するも、抗がん剤、放射線治療、ホルモン療法を経て、順調に回復(その後の経過はこちらをご覧ください)。現在は仕事にも復帰し、看護師として患者さんの身体と心のケアにあたっている。2008年に自らの闘病体験をつづった『がけっぷちナース がんとともに生きる』が2009年3月に飛鳥新社より新装刊。ブログ:「生きてる喜び日記
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11家族の思いやり

「自分はがん患者の当事者なのですが、がん患者の家族の気持ちというのを私はあまり考えてこなくて、自分のことで精一杯でそこまで気づけなかったのですね。去年、抗がん剤で髪が全部抜けてしまい、夏に弟の家に行った時に、暑かったのでかつらを取って、禿げた頭のままで2歳の甥っ子と遊んでいたのです。すると、うちの弟が仕事から帰って来て『あ、おかえりー』と言ったら『ちょっと俺が切なくなるからかぶってちょうだい』って。やはりその禿げた頭を見るだけで、『ねえちゃん辛い治療しているんだな』と弟が思っていたのだなと思うと、やはり暑くてもかぶらなくては・・・と思いました。家族の気持ちをその時から考えるようになりましたね。

山内さんとご家族(2008年春)
山内さんとご家族(2008年春)
左から弟夫妻、甥、母、父方の祖母、
父、姪、義理の姉、本人(敬称略)

母方の祖母が今年の4月の末に亡くなったのですが、それがちょうど私の本を出版した日だったのですね。その日まできっとお婆ちゃんは待っていてくれたのだと思うのですが、その出版記念パーティーが終わり、友達と一緒に温泉に行くと、夜、父から電話がかかり、『おばあちゃんが実はね、亡くなったんだ』と聞かされてすごくショックでした。バッドニュースは家族のなかでいちばん最後になるのです、私は。いろいろ考えるのでしょうね、『これを梨香に言ったら免疫が落ちるのではないか』とか、『病気が悪化するのではないか』と考えてくれると思うので、そういう家族の配慮や、ストレスを与えないようにしてくれている家族の気持ちはすごく有り難いなと思います。

うちの彼は『本当に気が休まる1年がない』といつも言いますが、でもがんになってそれを二人で一緒に乗り越えられたおかげで、やはり『この人なんだな』というのがわかりましたし、相手の愛情もわかり、自分も彼を大事にしなければという気持ちがすごく芽生えてきました。周りの方との絆が強くなったのを感じますし、家族がこうひとつになった感じがします。」

●患者さんに必要なこと

「がん患者さんはきっと話し相手がいちばん必要なのではないかなと思います。私は本当に恵まれているがん患者なので、家族もいますし、彼もいますし、本当に心の友がいっぱいいるので、吐き出したいことをなんでも言えて恵まれているのですが、ひとり暮らしのご高齢の方で、話し相手がいないけれども、自分のがんを受け入れられない人もたくさんいると思うので、がんになった方のご家族はやはり話し相手になってくれればその方の肩の重荷は少しでも軽くなるのではないかなと思います。あとは経済的にも支援してあげられるのであれば、支援してあげてほしいなと思います。ストレスがひとつでも少なくなればいいので、お金がないのにがんになって、体も辛いのに治るか治らないのかわからないのにこんなにお金をかけて治療をしなければいけないと思うと、それだけでも免疫力は落ちるので、力になってあげられるところは力になってあげてほしいなと思います。」