がんと向き合う

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山内 梨香さん
山内 梨香さん ①
(やまうち・りか)
看護師
盛岡市在住。2005年末、32歳のときに乳がんと診断される。手術後、骨と肝臓に転移するも、抗がん剤、放射線治療、ホルモン療法を経て、順調に回復(その後の経過はこちらをご覧ください)。現在は仕事にも復帰し、看護師として患者さんの身体と心のケアにあたっている。2008年に自らの闘病体験をつづった『がけっぷちナース がんとともに生きる』が2009年3月に飛鳥新社より新装刊。ブログ:「生きてる喜び日記
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12がんに話しかける

「今は乗り越えてこられて、がんになって悪いことばかりではなかったので、がんになってよかったと言うのは嘘になるかな・・・でもがんにも感謝しているところはありますね。ときどき話しかけたりします。あまり自分のなかのがんを否定して『取ってしまおう』とか『外に出してしまおう』と思うと、がんは却って根付いてしまうような気がするので、それよりもかわいがってあげれば、もしかしたら悪さはしないのではないかなと思い、ときどき足が痛いときも『ん?がんちゃんどうしたの?』という感じで話しかけたりしています。あまり歩きすぎたり、無理したりするとやはり痛かったりするのですね。『今日、ちょっと歩き過ぎちゃったね』と、共存しているというか、自分の子供に話しかけるような感じで結構かわいがっています。」

●がんを嫌わずに生きる

「がんという名前がよくないのではないかと思うのです。本当に『がーん・・・』とくるのですよね。もう少し可愛い名前にすればいいのではないかな。私は『ぴょんぴょん』がいいのではないかと言っているのですが。『あなたは乳ぴょんぴょんです』と言われたら、それだけで笑っちゃうのですよね。

でも、がんというのはもともと自分のなかにあった細胞が変わってしまったものだから、そんなに嫌わなくてもいいのかなと最近は思います。100人いたら100通りの治療があって、100通りのがん細胞があってあたり前なので、どういうふうにがんと向き合っていくかは人それぞれです。皆が私のようになるわけではなく、『こういう人もいるんだな』と思ってもらえて、『この人も頑張っているのだから自分も頑張らなきゃな』と元気をもらってもらえるとすごく嬉しいなと思います。

本当に底まで落っこちてしまったからなのでしょうか。もう、これ以上ないというくらいまで落ち込むと人間這い上がるしかなくなり、一旦這い上がってくるともう後戻りできないというか、上に上に行こうとするので、それより下には落ちないのですよね。『なぜそんなに明るいの?』とか『なぜそんなに前向きなの?』とよく聞かれるのですが、多分普通の人よりバカなのだと思います。普通に統計学などでいろいろと考えると、私はもうすでに死んでいる人間なのですが、でも『その統計なんかに乗っからなきゃいいんだ。私は私の人生を生きればいいんだ』と思ってからはすごく前向きでいられて、あまりいろいろ悪いことを考えても病気は治らないのだから、だったらやりたいことをやって一日笑って過ごしてやろうじゃないか、がんと共に生きるというのも悪くないかな、と思います。多分あまり深くまで物事を考えないバカな性格なので、こんなに明るくしていられるのかもしれないですね。でも、もっとバカになりたいと思います。大事なことですね、バカになるって。あまりお利口だとこうはいかないと思います。」