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山本千佳子さん
山本千佳子さん
(やまもと・ちかこ)
MRCミツイリボンクラブ 代表
東京都在住。43歳のときに乳がんと診断される。全摘手術および乳房同時再建術を受け、1年間のホルモン療法を経て現在に至る。乳がん患者をサポートしたいという思いから2003年にMRCミツイリボンクラブを設立、代表を務める。2006年に乳がん患者さんとご家族の心のアンケートをまとめた絵本『BE HAPPY』を発行。
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8時が解決してくれた家族との関係

「辛かったのは、家族との間に少し温度差があったことです。普通に仲のいい家族だとは思っていましたが、私がぶっきらぼうに告知を申告して、家族も(見かけは普通に)受け止めましたが、やはり皆それぞれに動転していたのかな・・・というのがあとでわかりました。痛くて手術の日も決まっていなくて『あぁ・・・乳がんて、こんなに痛みがあるの・・・』と思っているときに、(主人に)いろいろなことで説教をされても受け入れられませんでした。やはりいろいろ心配してくれていたのだと思います。そういう意味でも(自分が)あまり素直じゃなかったのと、家族というのは難しいな・・・としみじみ、今でも思います。結局時が解決したといか、やっているうちに普段の私になり普段の家族になったという形で、話し合いの結果わかり合えたとか、そういうことではなかったです。」

●一日が終わったら、ありがとう

「やはり今日できることは今日しようと思うようになりますね。もともとせっかちなのですが、ああしよう、こうしようと思っているけれど、先のことをずっと考えるよりは今日のことに始末をつけよう、今日が終わったら『ありがとう』と思うようになりました。

あとはいい空気を吸うために、いい空気を吐くこと。忙しい日常だとどうしてもいつも“息を吸って”生きているような気がするのです。“息を吐く”というのはリラックスにもつながるし、ストレス解消法としてもやはりいいことではないかと思い、ヨガは積極的に取り入れています。たくさん息を吐いて、たくさんリフレッシュしたいなと思っています。 」

●日常を大切に

「あまり先の目標とか、このがんは治るのか治らないのかとか再発したらどうしようとか、先のわからないことを考えて立ち止まって不安になってしまうよりは、今生きていて、ちゃんと起きることができて、明日は何を食べようとか、そういう身近なことを期待できる自分がいるということを喜びに感じてほしいと思います。あまり先のことを考えるよりは、来週は何をしたいとか、次の季節にはこういう服を着たいとか、自分の行っているカルチャースクールでワングレードステップアップしたいとか、小さなことでもいいので日常を大切にしていきたいと自分では思っています。

がん患者になって自分ではやはり素直じゃなかったことというのはずいぶんあって、平気だと思ってあまり泣かなかったり、自分を人に向けてよく見せようとして(自分に)プロテクトがあったような気がしたので、なるべく素直になると。任せるときは任せて、甘えるときは甘えて、泣くときは泣いてください。ご家族でなくても、友達でも、自分の趣味でも、音楽でも、その時にその方が必要とされるサポートで乗り切ってください、と思います。

医療情報は、少ない資料でもいいので、良質のものを自分がわかる範囲内で勉強する程度でいいと思います。あとは医者を信頼すること。信頼できないことがあったら、小さいことでも躊躇しないで聞くこと。それが勇気だと思います。勇気というのは闘うだけではなく、自分の幸せとか足元をしっかり確認することもひとつの勇気ではないかと思います。 」

●ご家族の方へ

「患者さんを取り巻くなかでいちばん苦労されるのはご家族だと思うのですね。家族としては体面もありますから、何とか支えなければいけないというその緊張で結構ガチガチになられて、すごく気合いが入りすぎて、患者さんにとって、こういう言い方はあれですが、ありがた迷惑になることもあると思います。家族の存在が必要なとき、かえって家族ではなく他人でスペシャリストの存在が必要なとき、ひとりにしてほしいときと、いろいろなことがあるので、いつも家族が気を張ってフォローしないといけないということはないと思うのです。患者は家族の気持ちがわかるからこそ遠慮してしまったりして、そうすると患者と家族もクタクタになって二重のダメージがたくさんあるような気がしますので、家族がいつも周りを取り巻いて守るということでなくてもいいような気がします。 」