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山内 梨香さん
山内 梨香さん ②
(やまうち・りか)
看護師
盛岡市在住。2005年末、32歳のときに乳がんと診断される。手術、抗がん剤、放射線治療、ホルモン療法を経て(詳細はこちらをご覧ください)、2008年9月より再び抗がん剤治療および、医療用麻薬による痛みの治療も受ける。現在、午前中は看護師として仕事をするかたわら、午後は講演会なども少しずつこなしている。自費出版した闘病記『がけっぷちナース がんとともに生きる』が2009年3月に飛鳥新社より新装刊。ブログ:「生きてる喜び日記
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4患者さんに癒される

「やはり自分が自分ひとりのために何かをしようと思っても、限界があるような気がするのですよね。だから職場に出て患者さんの悩みを聞いたり、マッサージをしてあげたり、癒してあげるということが、自分だけに集中しないための方法というのか。私も元気になれるし、患者さんも元気になれますから。また患者さんに私も癒されていることが多いので、私から仕事をとったら病気が悪化してしまうかなと思うくらい、仕事はすごく大切だなと思っています。

この前も1年ぶりくらいに会ったおばあちゃんの患者さんが、『あんた、ちょっと。本出してるんだね』と言いたかったみたいなのですが、『あんた、グラビアに出てんだって?』と言うので、『出てない、出てない』と言ったり、そうした一言ですごく笑ってしまいます。あと、今日も難病で歩けない方の足をマッサージしてあげていたら、『いらない、いらない。やらなくていい』と言うので、『いいよ、気持ちいいからやろうよ』と言うと、『お金がかかるでしょ。お金がないんだ』とおっしゃるので、『お金はとらないから』と言うと、すごく黙って『気持ちいい』と言っていました。なにかそういうお年寄りと話すことがやはり好きというか、自分も癒されるので、仕事はできる限り、体が動く限りは続けたいな・・とわがままかもしれませんが、思っています。雇ってくれるなら・・・という感じです。」

●職場の方たちの理解

「(仕事が)週に5日間というのは、私の中でも結構体力的にハードで、半日勤務で職場の方たちも配慮してくれているので、力仕事とかはあまりしないのですが、それでもやはり起きて着替えて仕事に行って、半日終わって帰ってくるともうぐったりだったりするのですよね。この間もインフルエンザの予防接種をしたのですが、4年前に1度して、本当に久しぶりにしたらやはり少し風邪っぽくなってしまい、頭は痛いし、ぞくぞくするし、このままインフルエンザになってしまうのではないかと思いました。普通の方よりも免疫系が弱いなというところと、あと疲れすぎると熱が出るのです。微熱ですが、なにか休めと言っているのだなと思って、その日は休んでいます。職場の方たちも無理しなくていいからと言ってくださるので、本当に自分の体調のいいときだけ行って、好きな仕事をして、本当に申し訳ないのですけど。本当に職場の方たちの理解がないとできないな・・と思っています。」

●生活のリズム

「なるべく早く寝るようにはしていますが、それでも寝る時間は12時ぐらいにはなってしまいます。職場が近いので朝は7時半ぐらいに起きて、ゾンビのように這って出て、恐ろしい顔をしています。私はロッカーで着替えるのがすごく速くて、白衣にバババッっと着替えると、ロッカーの同じ並びの人が『もう着替えたの?』と言うくらい速いのです。 今日はズボンのチャックを上げるのを忘れていて、エレベーターの前のところに立っていて歩きづらくて『あらっ』と思ったら、ズボンが下がっていたのです。知っている先生たちが後ろを通っていたから、『あ・・見られたかもな。』と思いながら、どこまでだらしないのだろうと思いました。そんな朝を、毎朝毎朝、奇跡を起こしています。8時に起きても間に合ったとか。

でも職場に行くと『山内さん、今日来てる?』『お話ちょっと聞いてくれない?』と患者さんのほうから言ってきてくださるので、頼りにされているというのがすごく嬉しいですね。私じゃないとだめなんだという、そういう何か特別な感じがして、嬉しいです。」

●普通の話ができることが楽しい

「この間も、『あのひと、しゃべれるのかな?』とほかの患者さんたちがあまり話しかけない難病の方に私は敢えて話しかけて、『兄弟や子供さんは何人なの?』とか、『だんなさんは戦争に行ったの?』とかいろいろお話を聞いて、そういう普通のお話ができることが楽しいです。

がんの患者さんも中にはいらっしゃって、ひとりすごく印象的な患者さんが、春夏ぐらいにお亡くなりになりました。肺がんの方で、ご家族の方が全然面会に来られなかったのです。私は時間があくといつもその方の足をマッサージしていて、危篤になってから亡くなるまでの1週間も、マッサージをしてあげていました。もう意識が混濁していてしゃべれるような状況ではないのに、『終わりましたよ』と声をかけたら、『あー』と声を出されて、ニコッて笑ってくださったのです。そのときの笑顔が忘れられなくて。亡くなった時間が朝方3時10分で、私は眠剤(睡眠導入剤)を飲んでいるので、夜めったに起きないのですが、なぜかその時間にパッと目が覚めて、『あれ?』と思ってまた寝ました。その日、日勤に行くと、お亡くなりになったということを聞いて『あぁ、あの方がご挨拶しに来てくれたんだな』と思いました。最期のあたりには妹さんやお姉さんが来てくださって、そのご家族と一緒に足をマッサージしてあげたらすごく喜んでくださいました。最期を看取った主任の看護師さんも、『足がきれいだった』と言ってくださり、涙がほろっと出ました。『やってよかったな・・』と思いました。」