がんと向き合う

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花井美紀 さん
(はない・みき)
父親の直腸がん闘病をきっかけに患者会の「ミーネット」を主催する。名古屋市と協働で名古屋市がん相談情報サロン「ピアネット」も運営している。会員は名古屋市内外から550〜600名。がんのピアサポーター養成講座を開催するなど、がん体験者だからこそできる支援の在り方を模索し、実践している。
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7患者サポート活動③
●ピアトレーナーコース

「最初の2年〜3年は、私が何もかも1人でやっているような状況で、お手伝いできるところは先輩のピアサポーターに手伝っていただくという形だったのですが、いろいろな状況があって、私がいなければできない活動というのは、ある意味展望もない。そこで、ピアサポーターになろうとする人をサポートする役割を1つ作ったのです。『ピアトレーナーコース』、平たく言うとサポーターの教育指導にあたるということですね、実践経験値を活かして…。

最初は、こういうことに手を挙げる人が4〜5人いればいいなぁと思ったのです。そしたらなんと23名もの人が手を挙げてくれて、昨年度(2011年)の7月から6回の講座を行いました。今までのプログラムの中でピアサポーターが担える部分を中心に、実践的な内容で行ったのです。それが、他の県から協力の要請をいただいたときに、見事にその力を発揮してくれた。他県の講座でも。1年間かかって4期生を養成してきたのですけれども、その4期生の講座にもすべてかかわってもらって、今、ピアサポーター養成講座の牽引力は、そのトレーナーコースのみなさんです。

トレーナーコースは昨年(2011年)の7月に募集をして、それ1回きりですけれども、終了してトレーナーになったかというと、まだまだそういう段階ではありませんので、ピアトレーナーとは名乗っていません。トレーナーコース在籍者ということになります。やはり、(ピアサポーターに)なろうとする人を指導教育していくというか、自分たちがその養成に影響力を持っていくということは、一朝一夕でできるものではないと私は思っているのです。やっぱりもっともっと実践経験を積んでもらわないといけないなぁという気がしていますし、コースに参加している本人たちも同じ思いだと思うのです。だからこのトレーナーコースを何年でどこで終了するのか、そしてトレーナーになるのかということも、今考えながら走っているという状況です。」

●スキルアップに必要なこと

「がんのピアサポートは、まだ黎明期からようやく発展期へ向おうとしている段階だと、私などは思っているのですね。人間一人1人が違うように、がんも個別性の高いものですし、同じようながん種の同じようなステージの方がいたとして、悩みは必ずしも同じではないですよね。そういったことにフレキシブルに対応していけるには、やはり、たくさんの相談対応実績を積んで、引き出しを増やして、こういう場合に最適な方法はこれもあるしこれもあると、そういう選択肢を提示できるようなところまでスキルを積んでいかないと、すごく一元的になってしまう。

1人のサポーターが身につけたこと、気づいたことは、共有していかないといけないと思うのです。ですから、例えば事例研究会とか、医療現場で言うとカンファランスのようなものを定期的に行っています。また、このピアネット(名古屋市がん相談情報サロン)でもそうですけれども、病院内でサポート活動をしたときには、必ず、最後の終了ミーティングというものを行って、こういう患者さんにこういうご相談を受けて、こういうふうに対応したということを、みんなで報告しあって、1つの記録にまとめます。そしてこれはみんなが知っておいたほうがいいような事例だなぁと思う時は、ご相談者を特定できないような形で少しアレンジはしますけれども、みなさんに報告をして、ご自分自身でも考えていただくということに努めています。」

●ピアサポーターの役割

「私たちに声をかけてくれる患者さんやご家族というのは、私たちが、治療体験者のピアサポーターという存在だということを知っていても、治療の疑問だとか、治療上の悩みだとか、そういうことを問いかけてこられます。そうしたことにお答えしていくにしても、わかっていて聞いているのか、わからないままに対応するのかでは、話を聞いてもらう側の満足度が至極違ってきますよね。だから理解した上で聞く。

そうして、医療的なアドバイスをするのではなくて、『例えば、それはこういうことですね』と、理解した上で話をまとめる。そして患者さんの悩みの優先順位、最も関心のあること、解決したいことは何かをお互いに整理し合う。そうした上で、それでは今度、診察日に主治医にこれをこういうふうに尋ねてみてはいかがでしょうかとか、例えば、そのことについて、どこか信頼できるサイトや情報をご紹介したりして、一緒に探りあてていく、こういうことが求められていると思うのです。ある意味、聞き取るだけではなくて、情報支援と言いますか、患者さん自身が自分自身で、より良い判断をしていくためのお手伝いをするというのも大きな役割だと思っています。そのためにはやはり、がん種別のがんの基本知識は欠かせないと思っています。

がんというものを、治療の進歩にしたがって克服できる病気、あるいは共存できる病気ととらえられるようになりつつあるとは思うのです。私たちの活動で、がんにかかった方が、こんなに元気に前向きに、他の方をサポートするために活動をしている姿を見てもらうことで、やはりがんの言われなき偏見や誤解が、少しでもなくなっていけばいいなぁという思いもあります。」