統合失調症と向き合う

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笠井 清登さん
笠井 清登さん
(かさい・きよと)
東京大学大学院医学系研究科精神医学分野 教授
1995年に東京大学医学部附属病院精神神経科で研修開始、2008年6月現職に就く。神経画像・臨床生理学的手法を用いて、統合失調症、自閉症、心的外傷後ストレス性障害などの脳病態解明で成果を上げてきた。統合失調症の早期リハビリテーション(デイホスピタル)の分野にも力を入れてきている。
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2統合失調症の治療
●薬物療法と心理社会的療法

「統合失調症の方の治療は、大きく薬物療法と心理社会的な療法に分けられます。で、それは別に二律背反じゃなくって、両方行うものだと思います。薬物療法は、抗精神病薬が中心ですけれども、心理社会的な療法は、デイケアなどで、集団でリハビリテーションを行って、ソーシャルスキルズトレーニング、社会生活技能訓練とも言うんですけども、統合失調症を持つ方は、すごく若い時期からお病気になられて、いろいろな社会的経験をする前にお病気になってしまうような方が多いんですね。そうすると、他の方が、どういう表情だとどういうことを考えているのかとか、あるいはそれこそ挨拶の仕方とか、そういうものまで苦手だったり獲得できていなかったり、あるいはお病気に伴って、そういう能力が一時的に衰えたりしているわけですね。そういうものを回復するためのトレーニングを行う療法もあります。

もちろん統合失調症の方にはさまざまなご家庭内とかあるいは地域で生活していく上でのいろんなお困りになっている点があるわけですね。そういう生活のアドバイスをするのも大事な役割だし、対人関係も苦手なので、どういうふうにすると対人関係がうまく行えるかといったような、普通の、なんて言うんでしょうね、精神療法みたいなのもすごく大事です。そういうものをサポートガイドすることで、その方の感情も安定することがあります。」

●ご家族へのアプローチ

「もう一つ重要なのは、家族に対するアプローチです。ご家族の感情の起伏が激しかったり、ご本人に対して厳しく接し過ぎてしまったりとかすると、ハイ・イーイー(High EE)と言うんですけど、そういう方を親に持つと、統合失調症を持つ方の治療がうまくいかないというようなことも知られているので、ご家族の方に正しい知識や正しい対応の仕方を学んでいただいたり、あるいはご家族自身も、小さい頃から思春期までまったく普通だった子が、徐々にあるいは急に、なんて言うんでしょうね、普通ではない症状が現れたり、社会的な予後が、ご自分達がお子さんに期待していたよりも一旦下がってしまったりするので、ものすごい戸惑いとショックがあるんですよね。ご本人のみならず、ご家族を支えるのも重要です。

(また)ご家族を個人的に支えるのも重要ですけども、家族会といって、ご家族同士が息子さん娘さんについて、自分たちが大変だったこととかを話し合うだけで、ピア・カウンセリングみたいな、ご自分、当事者同士で、なんて言うんでしょうね、少しカタルシスを得られるようなところもあって、すごく有効ですけどね。」

High EE:EE(Expressed Emotion)とは感情表出のことで、批判的態度や情緒的巻き込まれの強い家族の感情表出をHigh(高)EEという。
ピア(peer):仲間、対等という意味
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