統合失調症と向き合う

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笠井 清登さん
笠井 清登さん
(かさい・きよと)
東京大学大学院医学系研究科精神医学分野 教授
1995年に東京大学医学部附属病院精神神経科で研修開始、2008年6月現職に就く。神経画像・臨床生理学的手法を用いて、統合失調症、自閉症、心的外傷後ストレス性障害などの脳病態解明で成果を上げてきた。統合失調症の早期リハビリテーション(デイホスピタル)の分野にも力を入れてきている。
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5抗精神病薬の服用を止めることは可能か

「従来で言えば、その悲観的な見通しともつながってきてしまうんですけども、半永久的に抗精神病薬を飲んでいただくというのが、我々精神科医の間でも常識で、それを患者さんにお願いしている状況でした。というのは、お薬を中止していいのかどうかの判断というのが、ほとんどできない状態なんですね。データとしては、統合失調症の方が服薬を中断すると2年間で8割ぐらいの方が再発しますというデータだけはきちっとあるんです。もしかして、ごくわずかの方は再発しないでいられるかも知れないのですけども、多くの方が短期間で再発するというデータがありますので、我々としては安全策を(患者さんに)お勧めするわけなんです。再発するとその度に階段状に社会的な予後が悪くなることも目の当たりにしていますので、そういうふうにお勧めするわけですね。そうしますと、多くの方が半永久的にお薬を飲んでいただくような形にどうしてもなってしまうわけです。

一応注意しておかなければいけないのは、我々のところに、あまりお越しになっていないような、治療も受けていないけどもそれなりに社会に適応しておられるような、その(病院に)通っていない例が、患者さんというのは不適切かもしれないけど、当事者の方もいらっしゃる可能性があって、そういう方を晩期寛解例(ばんきかんかいれい)と呼んだりしています。お年をそれなりに取ってくると統合失調症の症状が落ち着いて、あまりお薬を飲まなかったり治療をされなくても社会に適応していらっしゃる方がいるんじゃないかというのが、我々精神科医の間でも一応気にはなっていて、そういう例を、晩期寛解例と呼んだりするんですね。で、そういう方もおそらくいらっしゃって、いわゆるさっき言った、寛解とか回復をしてらっしゃる方もいるのではないかと思いますので、本当であれば、どういう方がお薬をどのタイミングで減らしたり中止していいのかの客観的な指標があれば、すごく良いわけなんですよね。それが今まではなかったということです。

ところが、可能性があるのは、最近やはり進んできた神経画像とかで、もしどのような薬物療法が、その方の脳の機能を一番保てるのかとか、ひいて言えば薬物療法中止のタイミングとかが、少し客観的に補助的にわかればもう一番だと思いますけどね。」

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