統合失調症と向き合う

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西田淳志さん
西田 淳志さん
(にしだ・あつし)
東京都精神医学総合研究所
2008年に三重大学大学院医学系研究科を修了(医学博士)。同年、東京都精神医学総合研究所に研究員として着任。その後、University College of Londonの客員研究員、東京都医学総合研究所の主席研究員、プロジェクトリーダーを経て、2020年に同研究所の社会健康医学研究センター長に就任(現職)。
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6調査結果から分かったこと
●調査結果から分かったこと① 病気に関する知識
図1
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「まず1つ重要なポイントは、お子さんないしご家族がご病気になられたときに、精神疾患についての情報や知識を持っていたかということに関してご質問しますと、約9割近い方々が、正確に言いますと87%ですけれども、病気に関する知識がその当時なかったというふうにおっしゃられています(図1)。この結果から、ほとんどの方々は病気をご家族が体験する前に十分な情報を持っていなかった。そのために、やはり初期の対応が遅れてしまった、もしくは初期の対応が適切ではなかったということで、非常に後悔されているというご家族が多くいらっしゃいます。」

●調査結果から分かったこと② 支援につながるまで
図2
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図3
図3
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「2つ目は、早期の支援を求めたときに、なかなか適切な支援を得られるところにつながらなかったというような結果も出てきています。で、支援につながるまでに、全体の4割近い方々が約1年以上かかった、もしくは3年以上かかったという状況にあったことが分かってきています(図2)。ですから、発病と思われる時期から、実際の治療につながるまでそれだけの長い期間かかっている方々がそれだけ多くいらっしゃるという大きな問題も分かってきました。

それからもう1つ重要なことは、やはり精神科医療機関に対するイメージというものが、発病当時、非常にいいものではなかったと(図3)。ですから、偏見や差別の問題があってですね、病気だろうというふうに思っていてもなかなか医療機関に行けなかったというふうにお答えになっている方が非常に多くいらっしゃいます。偏見・差別の問題によって、なかなかサービスにたどり着けなかったという大きな問題が分かってきたということであります。」

●調査結果から分かったこと③ 治療中断

「もう1つ重要なポイントは、治療につながってからの問題ですが、治療中断を半年以内にされている方々が約3割以上いらっしゃるということが分かってきました。先ほど申し上げたように、早期介入におきましては、最初の数年間の治療というものが非常に大事になってきますので、受診後、6か月以内に治療を中断してしまうということは、非常に不本意と言いますか、早期介入の観点から言いますと、もったいない状況になってしまっているということです。」

●調査結果から分かったこと④ 治療中断の理由

「なぜ、治療の中断が発生しているのかということについて詳しく質問していきますと、多くの方々が、初診時に持つ、その医療機関やスタッフの方々の印象があまり良くなかったということが、中断の理由になったというふうにお答えになっています。

図4
図4
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じゃどうしてあまりよくない印象を持たれたんですかという質問をしてみますと、その1つの要因としては、これからの治療や病気の経過、回復の見通しについての説明が十分に得られなかった(図4)。そういう中で、非常に疑心暗鬼になってしまった、それによって治療の中断が発生してしまったというふうにお答えになっているご家族の方々が非常に多くいらっしゃいました。非常に興味深いところはですね、お話はよく聞いてくれたけれど、説明がなかったというところが、非常に、なんて言いますか、治療中断につながる初診時の悪い印象につながってしまったということが、この調査で分かってきています。」

●調査結果から分かったこと⑤ 治療中断に家族が影響

「それからもう1つ重要な点があります。それは患者さんではなくて、ご家族ご自身が6か月以内に信頼できる専門家に出会えていた場合、もしくは出会えなかった場合では、ご本人さんの治療の中断率が大きく異なるということが分かってきました。ですから、ご家族が満足して説明を受け、ご家族が満足して納得して、支援、治療に協力していくという体制を支援していく専門家と出会えている場合といない場合では、非常に治療の継続の経過が違ってきてしまうということがはっきり分かってきています。これも今回の調査結果の大きい発見でありました。ですので、安定した治療を継続していくためには、ご家族の支援が非常に不可欠であるということが、この調査結果から、非常に分かりやすい形で出てきたということであります。」

●調査結果から分かったこと⑥ 未治療期間と治療中断の変化

「私ども今回の調査結果をある方法で解析をして、最近病気になられた方と、比較的以前と言いますか、だいぶ前にご病気になられた方とを分けて、未治療期間の長さというものを比べてみたんですね。その結果、比較的最近ご病気になられた方は、やはりクリニックが増えたり、最近非常に、心療内科も含めて精神科関係の支援が増えてきてますので、比較的昔に比べると未治療期間というものは、短くなってきてるんですね。これは有意に異なりました。しかしながら、興味深かったのは、未治療期間は短くなってきているのですが、治療につながったあとの治療の中断率というものが、昔も今も非常に変わっていないという状況が明らかになりました。ですから、啓発をし、相談窓口を作っていって、若者が早く治療につながれるようにするということが非常に重要になってきますけれど、一方で、現状から考えますと、つながったあとのサービスの内容ですとか質ですとか、サービスの提供体制というものをきちんと変えていくことも非常に重要になってくるんではないかということが分かってきました。」

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