統合失調症と向き合う

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渡邉博幸さん
渡邉 博幸さん
(わたなべ・ひろゆき)
国保旭中央病院神経精神科
地域精神医療推進部部長
1992年千葉大学医学部卒業、同大附属病院研修医を経て、1998年大学院修了後、同精神科助手。2007年より同講師を経て、2009年に現職に就く。地方での精神医療の活性化を図るため、精神疾患に特化した訪問看護ステーション「旭こころとくらしのケアセンター」の設立など、様々な地域精神医療の仕組みづくりに関わり、それらとの強い連携のもと精神科医療を実践している。
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10地域精神医療の今後

「やはり入院治療から外来、在宅の医療への大きな流れというのは進んでいく、あるいは進んでいかざるを得ない、あるいは進ませていきたいというふうに思います。

統合失調症の治療に関しては、いくつかの大きな変換がなされていくと思います。まず、今世紀、21世紀に入って副作用が出にくい抗精神病薬が主流になってきました。そのために統合失調症の当事者の方がずいぶん地域に出て、自分がやりたい希望を少しずつかなえられるようになってきました。

しかしまだ統合失調症の症状には、“生活障害”という乗り越えなければいけない大きな壁があります。自分にとって大切な情報を適切に集めて、適切に処理して、適切に実行に移す。そういった認知機能が、統合失調症の一部の方では大変奪われてしまうというのがあります。それに対して有効なお薬というのは、今までなかなか得られませんでした。今後、おそらく数年のうちに、この統合失調症の認知機能障害に対して、直接的に有効性を示せる薬が、いくつか出てくると思います。それが臨床の現場で使えるようになりますと、さらに統合失調症の方の社会生活への復帰、地域生活を取り戻すということがより可能になってくると思います。

ただ、そのときにやはりお薬だけでは、今まで十年何十年と失ってしまった生活のスキルが取り戻せません。そういったことを取り戻すためには、薬物療法以外のさまざまな心理社会的な治療、リハビリテーションが大事になってくると思います。そういったリハビリテーションも、開発をどんどん進めていく必要がありますし、現在、そういったリハビリやご本人の生活を支えるスタッフ、そういう技術に関しては、残念ながら医療の診療報酬上の配慮というのがまだまだ不十分です。そこに十分光を当てて、新しい薬物療法を生かせるような心理社会支援、リハビリテーションができるように、行政にも配慮をいただきたいと思います。

そういうことがうまくいけば、今後、統合失調症の治療は、入院中心から外来、地域支援中心に移っていくのではないかというふうに考えておりますし、さらには統合失調症の方の就労、働くこと、そして自分が誰かの役に立っているという実感を持った生活ができること、そこに近づけていけるのではないかと思います。」

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