統合失調症と向き合う

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藤井康男さん
藤井 康男さん
(ふじい・やすお)
山梨県立北病院院長、
慶応義塾大学医学部精神神経科客員教授
1977年慶応義塾大学医学部卒業。1978年4月 山梨県立北病院に勤務。1985年9月 医学博士を授与。1985年8月〜1年間 フランスのバッサンス公立病院へ留学。2003年4月山梨県立北病院院長に就任し、2007年4月より慶應義塾大学医学部精神神経科客員教授。
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8補助的に併用する薬
 ②「抗パーキンソン薬」

「以前は、ハロペリドール(商品名:セレネース、ケセラン、ハロステン、リントン)の時代と言いますか、第一世代の薬がよく使われた時代に関しては、ほとんど100%近くの患者さんが、抗パーキンソン薬を、抗パーキンソン薬にもいろいろ種類があるのですが、抗コリン性の抗パーキンソン薬というのが使われたのですね。代表的な薬だと、アキネトンとかアーテンという薬がありますし、日本でよく使われているのはピレチアかヒベルナという(商品名である)プロメタジンという薬も日本でよく使われている薬ですけど、こういう薬が最初から併用されているのが、昔からの投与方法だったのです。

そうすると、もちろんそれでいろんな副作用を予防できることもあるのですけれども、この抗パーキンソン薬による副作用というのが、臨床的に大きな問題になってきているのです。これには2種類ありまして、1つは、いわゆる末梢性の抗コリン性の副作用と言われているもので、一番代表的なものは、口が渇く、それから便秘ですね。それから目がぼやけるというか焦点が合わなくなる。そういうあたりが代表的な副作用だと思います。これは、患者さんにとってたいへん困るのですね。便秘などがひどいと、例えば、腸閉塞になって非常に重大な問題になることもありますし、口が渇いてしょうがないというと水を飲み過ぎて、次にいろんな問題が起こることもありますね。

もう1つの問題として、中枢性の抗コリン性の副作用があることが知られています。これは気がつきづらいのですけれども、物忘れが一番問題になりますね。どうも記憶が悪くなった、これは病気のせいじゃないかとか、ぼけたのではないかと思われるのですけども、結構この抗コリン性の副作用であることがあるもので、いわゆる認知機能にいろんなマイナスの影響を与えるので、抗パーキンソン薬をできるだけ使わないで統合失調症の治療をするということは、抗コリン性の副作用を避けるという意味でたいへん重要になります。

ただ、パーキンソン症状というのが出てくると、これはたいへん大きな問題になりますから、それをどうしても防ぐために必要な場合もあります。だからそういう場合にもちろん併用することはいいので、絶対併用してはいけないということではないのですが、(そういう場合でも)できるだけ少ない量で治療することがいいのですよね。これは、抗コリン薬の場合は、それが入っているか入っていないかということが非常に問題になって、入っていれば副作用が出ないのですけど、(服薬を)やめてしまうと出るという方は残念ながらいるのですが。ただ、その抗コリン薬の、要するに抗パーキンソン薬の量をどんどん増やしたから治るという問題(で)はないのですよね。だから、抗コリン薬、抗パーキンソン薬は、使うにしても、できるだけ少ない量に留めておくことが一番良い方法だと思いますね。」

●抗パーキンソン薬を併用するタイミング

「割合ハロペリドールで長いこと治療していた経験を持たれた先生が、だいたいハロペリドールを使う時、最初から抗コリン薬を併用していました。それが、日本で当たり前の治療法だったので、そういうやり方が染みついている場合が多いですね。それはなぜかというと、ハロペリドールの時代のパーキンソン症状は非常に強いもので、出ると患者さんもとてもたいへんだったとの思いがありますから、安全第一で最初から併用するという方法がまだやられている方も結構いるかもしれません。

第一世代の薬、ハロペリドールとかフルフェナジン(商品名:フルメジン)というような薬は今でも使われることがありますが、そういう薬を使う場合は、少量の抗パーキンソン薬を最初から併用する方法というのは、今でも間違いではないと思います。中にはそういうことが必要でないこともありますので、だんだん減らすのはいいのですけども、やはりあったほうがいい場合が結構多いですね。

けれども第二世代の薬で、薬を最初から併用するというのは、基本的にしないほうがいいでしょうね。第二世代の薬というのは、抗パーキンソン薬を併用しないで治療できるかもしれないというのが非常に大きなメリットですから。

ただそういう場合でも、例えばリスペリドンなどは結構パーキンソン症状が出ることもありますし、アリピプラゾールもそうですから、少量の抗パーキンソン薬が必要なことはあります。そういう場合に(抗パーキンソン薬の)量を少なくしてもらって続けたほうがたしかにいいことがあるのです。だからその辺をちゃんと見分けていらっしゃる先生だったら、それをちゃんと説明してくれるだろうし、そういうことを十分分かった上で服用されるのがいいのではないかと思いますね。」

●併用薬を減量、中止する場合

「それをずっと治療しなければならない方はまた別ですね。だんだんだんだん薬の全体の量が減ってきたりすると、抗パーキンソン薬も減らしていったりやめてくることができると思います。

ただ、この抗パーキンソン薬のやめ方というのは十分気をつけなければいけない。急激にやめると、いろんな問題が起こることが知られていますから、これはゆっくり少しずつやめていって、場合によったら飲んだり飲まなかったりしながらやめていくぐらいの慎重さが必要です。例えば、『抗パーキンソン薬は副作用があるから、これはすぐやめだ』というようなやり方はきわめて危険ですね。だから、やめる場合でも非常に慎重にお医者さんと相談しながらやったほうがよろしいでしょうね。」

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