統合失調症と向き合う

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藤井康男さん
萱間真美さん
(かやま まみ)
聖路加看護大学精神科看護教授
1986年聖路加看護大学卒業。質的研究方法を用いて、ケア技術やさまざまな状況にあるケア対象者の主観的体験に関する多くの研究に参画している。精神障害者の退院促進および地域ケアを支えるサービス提供のあり方、精神科訪問看護の実態と効果なども研究。
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12訪問看護の今後について
Q.今後、日本での訪問看護の普及や質の向上に大切なことは何でしょうか

「実は、平成23年度から“アウトリーチ推進事業”というものを国のモデル事業でやっていまして、今、全国で25道府県35チーム(現在は、24道府県・37機関)が、新たにアウトリーチに取り組んでいて、ピアサポーターの方もチームに加わられ、心理職の方も、相談支援事業者の方も加わられて、福祉と医療と当事者と、みんなでアウトリーチをやっていきましょうというモデル事業があるんですね。

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精神障害アウトリーチ推進事業(概要)

(2012年)9月に6チームを訪問しまして、いろんなミーティングに出させていただいたり、訪問に連れていっていただいたりしましたが、地域によって、日本も広いのでもともとある資源が全然違うし、病院も歴史が全然違うので、アウトリーチをしっかりやってきたところもあれば、この事業で初めて行ったというようなところもあるんですけれど。

実際にケースに行ってみて、『ほんとに地域で生活を支えられると、いいお顔をされるんですねえ』ということを体験するスタッフが、圧倒的にこの事業で増えているように思うんです。それで、保健所の人や市役所の人や区役所の人も、今までは『精神科の病院のスタッフと一緒に働く(とか)、病棟の中で働いているスタッフなどと会ったこともない』というのがほとんどだったのですけど、ケースを挟んで、一緒に修羅場を潜ったりする中で信頼感が生まれたりとか、孤独じゃないということが、お互いに分かったりするようになって、ネットワークが広がっているように思うんですね。それなので、訪問をしたこともなかった、病院でしか働いたことがなかったスタッフも、だんだんとその地域で仕事をすることに慣れつつあると思うので、これが広がっていって、病院でケアを受けなければいけない時ももちろんあるんですけど、病院でケアを受けたいか、それとも地域でケアを受けたいかが、当事者の方やご家族に選んでいただけるようになったら、それは本当に素晴らしいことかなぁというふうに思っていますので、スタッフももちろん修行しないとそのままでは、なかなか使えないですけれども、この輪が広がっていくといいなと思っています。」

Q.「アウトリーチ推進事業」にピアサポーターが加わる意義は?

「もちろん、ピアの方達、当事者の方達の就労の場の確保の一環としても、このモデル事業は、規定されているんです。就労の場はもちろんそうですけれども、ピアの方がカンファレンスに入っていると当然視点が違うので、例えば、医療関係者が、『あの人、なかなかうまくいかないのよね』とか、『なんでまたあんなふうになっちゃうのかしら』みたいになっている時に、『いやあ、そう言われてもね、めげちゃうからね、そういう言い方はあんましないほうがいいと思うよ』とピアの方がおっしゃると、ハッとするんですよね。私達、忙しい目線で、自分のペースで進めたいと思っていたけど、そんなものじゃないよなぁみたいなことがすごく分かるので、ピアの方が入ると、カンファレンスの場が締まります。

当事者の方のお力はすごく大きいし、私達など、お薬を、『こういう事があります』などと説明できたとしても、当事者の方と同じ量を飲んだことのある人はたぶんいないと思うんですね。でも、同じ量を飲んだことのあるピアの方が、『それでも、この部分は必要なんだ』というようなことをおっしゃる、その説得力は、何にも勝るものがあります。ピアの方、本当に素晴らしい活動をしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるので、今後が楽しみだと思います。」

Q.精神科医療の過疎地域でのアウトリーチ事業はどうなりますか

「私達の “アウトリーチ推進事業”は、むしろそういったあまり進んでいないところで、病床を少し減らして地域へのケアに取り組もうとしているところを対象に、今、広がってきていますので、これが一般制度化されて、そういう活動が評価されれば、ずいぶん裾野も広がっていくと思います。

ただ、日本は広いので、いろんなところに行っていて、なかなかパッと変わるということはないなと思うのですが、ただ『じわじわ』と、ほんとに当事者の方やご家族の方のお力をいただいて、変えていくしかないのかなぁと思っています。」

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