コラム「なぞを追う」夏苅郁子さん 「動物、大好き!(後編)」
動物と食べ物
動物が絶対ならないのが摂食障害だと、動物大好きの私は長い間思っていたが、実はそうではないらしい。
「雌豚やせ症」という、何とも言えないネーミングの病気があるそうだ。
英国で、拒食症の動物モデルが見つかったというニュースがテレビで放送されていた。
ニュースでは「脂身のない食肉を作るために交配されたある種の血統の雌豚だけに発症する病気だそうで、その行動は人間の拒食症にそっくりなのだという。低カロリーの食餌(わら)だけを好んで食べるようになり次第に過活動となり、最終的に極度に痩せて衰弱し死亡するという。この雌豚やせ症の発症にはストレスが密接に関連しており、子豚を親から引き離すのが早すぎたり、新しい群れに適応させようとするときに引き起こされるのだという。人間の発症状況とも極似している。」という。
さらに「摂食障害には遺伝的な要因が関与していることが推察されている。ある家系においては、摂食障害に罹りやすい素因が存在し、うつ病や神経症との関連も示唆され生物学的背景が次第に明らかになりつつある。」と報道されているのを聞いて、私の母が32キロの体重だったことを思い出した。
摂食障害に限らず、身体疾患も含めてあらゆる病気は遺伝子によってプログラミングされている。
私は、そうした遺伝子も持っているから、ストレス下で摂食障害という症状が選ばれたのだろうか。
だとすれば、カラスの60点主義(前編参照)はやはり理にかなった考え方だと思う。
今の科学では遺伝子は丸ごと入れ替われないが、工夫して症状と共存することは十分できると思う。
これは統合失調症でも強迫性障害や双極性障害にも当てはまるように思う。
それにしても……、そもそも人間の都合で脂身の少ない家系に作りかえられた挙句、やせ症になった雌豚さんには同情する。