統合失調症と向き合う

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岡田久実子さん
岡田久実子さん
(おかだ・くみこ)
2人娘の長女が統合失調症の体験者。治療を受けるも病名や統合失調症に関する情報がない中、娘が再発。いくつか病院を変えながら回復を目指した。親として辛い経験をするが、現在は、娘の症状も安定し結婚、育児をサポートしている。さいたま市精神障害者もくせい家族会会長として、今後の精神科医療や社会のあり方への提言をしていきたいと語る。
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13医療者とのコミュニケーション
●診断名について

「一番最初の時に、娘自身が、『お母さん私の病気ってなんなんだろう』と、再発のあとに言った時があったんですよ。それで『じゃ、先生に聞いてみようか』ということで、娘の口から先生に『私の病気はなんなんですか?』と聞いたことがあったんです。で、私はその時に、当然のようにきちんとした診断名を言ってくださるだろうと思っていたんですけども、先生はすごく戸惑った様子をされて、『神経衰弱かな?』というふうにおっしゃったんですよ。

私、すごく驚いて…。(それまで)診断は聞いていなかったですけれども、出されている薬が明らかに統合失調症の薬だったので、親とすれば覚悟を決めていましたし、娘も介護福祉士の勉強をした時に、選択科目で精神疾患というのがあって、それを選択して勉強したことがあって、どうも自分の症状は、精神分裂病、勉強した時はそういう病名だったので、精神分裂病じゃないかなという思いがあったようなので、それで先生に聞きたくなったんですって。で、先生に聞いたら、そういう『神経衰弱』というようなあいまいな病名を言われて。

それで家に戻ってきて、『先生は、あなたの病気はなんだって言っていた?』と言ったら、『先生はなんか訳の分かんないことを言ったけど、私は精神分裂病だよねぇ』と、娘自身が言ったんです。で、『なぜそういうふうに思うの?』と言ったら、やっぱり自分が勉強した、その病気の症状とすごく似ているから、そうに違いないと思うというふうに言ったので、もう今はちゃんとこれを確認すべきだなあと思ったので、『実はお母さんも、あなたが飲んでいる薬は何の病気に効く薬なのかと調べたら、やっぱり精神分裂病のお薬が出ていたので、その病気なんだと思うよ』と。だけど薬を飲んでちゃんと生活に気をつけていれば、そんなひどいことにはならないから、大丈夫なんだって、前みたいに病院を勝手にやめたり、薬をやめたりすることをしないで、ちゃんと治療して、がんばってやっていこうねぇということを、その時に娘と私の間で確認したということです。なぜ先生がきちんと診断名をお伝えされなかったのか、いまだに疑問ですね。」

●説明のあり方

「すごく戸惑われた、あの先生の様子を見ると、やっぱり本人が、その病名を聞いてショックを受けることを懸念されたのかなあとは思うんですけれども。

私自身は、どんな病気であっても、やっぱりちゃんと何かというのを知って、じゃ、それに対してどうすればいいかということも、ちゃんと情報として伝えてもらって、それで本人も家族も少しでも良くするために、治療に前向きに関わっていくということが、どんな病気でも必要なんだろうというふうに思っていたので、当然正しい診断名をくださって、でも、こうこうこういう治療をするから大丈夫なんだよと、そういうメッセージをくださるものだと期待していたんですけれども、まったく違っていましたね。

で、次の先生の時に、本人が、障害年金をもらいたいということがあったので、それ(申請)に必要な書類をそろえるときに、先生の診断名の書いた書類があったので、私は本人に見せました。で、やっぱりこの病気だねということで確認しあいました。(統合失調症)と書いてありました。

先生によっていろいろみたいですね。言ってしまったあとのことを心配されるとしたら、その言ったあとに、本人・家族が動揺することもちゃんと受け止めるような治療を考えていただきたいなというふうに思うんですけどね。」

障害年金:病気やけがなどによって、一定程度の障害の状態になった人に対して支給される年金のこと。障害の程度に応じて支払われる金額が異なる。先天性障害の場合は障害基礎年金が対象となる。

●医師から言われて良かったこと

「そうですね。今の病院に移った当時の主治医の先生が、娘が『仕事に出なくちゃ』とまだまだ気持ちが焦っている時に、すごく穏やかに、『そうだよねぇ、仕事は大事だよね。仕事できるといいよねぇ。だけど、今の君の生活の中で何か楽しいことができているかい?』と聞いてくださったんですね。で、娘が『何もありません』と言った時に、まず楽しいことを探してみようよと。仕事に出ると、やっぱり大変なことが一杯で、なかなか楽しいことって見つけられないから、すぐ疲れてダウンしちゃうんだよねぇ。だから、その前に楽しいことをたくさん見つけて、楽しいことを一杯経験して、それから仕事に出て行くと、多少辛いことがあってもがんばれるよ、仕事の前にまず楽しいことを一杯しようよと、そういう話をしてくださったんですよ。

それは、やっぱり私にとっても、成人して、社会に出ていない娘に対してはやっぱり社会的な引け目というのもまったく無いと言ったらウソになりますけども、社会に出るためのステップとして、今は楽しいことをしていいんだということをお医者さんから言っていただけたのは、すごく有り難かったですね。それで娘とその帰り道、『楽しいことを一杯していいんだって』と、『じゃあ明日から何する?』とか言って、『ランチしようか』とか、『映画観に行こうか』とか、そんなふうに2人で生活をエンジョイするということを一緒に考えられるようになったのは、すごくお医者さんのアドバイスとしては、有り難かったかなあというふうに思っています。」

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