統合失調症と向き合う

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米島健二さん
米島 健二さん
(よねしま・けんじ)
48歳。32歳のときに統合失調症と診断。現在、精神障害者のセルフヘルプ・グループ「NPO法人Wendy(ウエンディ)21」の所長として活躍。10年前に障害者小規模共同作業所として北九州市の認可を受け、2008年4月からは地域活動支援センターウエンディ本部として動いている。妻、娘(5歳)、妻の母親と4人暮らし。
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12統合失調症の方へのメッセージ
●社会参加とは

「食器洗いとか風呂掃除とか、僕、係りで家におるときからやっていたんですけども、やっぱり誰かの役に立っている、そしてまた誰かがまた別の誰かのためにまた役に立っているという、その人のつながりですよね。
社会参加というのは外に出て行って働けとか、舞台に立って踊れとかそんなことばかりじゃなくて、家で食器洗うのも社会参加なんですね。それでお母さんが元気に働いていける、働いた出先で何かしらお金儲けてくる。
社会復帰とか社会参加するのは、病気が寛解してからというふうに考えがちなんだけれども、今、自身でできることで僕たちは社会参加できることがないかということは常に考えているんですよね。

(それは)社会というか自分以外の他者を認めることによって始まることなので。うちの妻を言いますと家族の面倒しかみません。作業所にきてもお母さんの面倒しかみない。でもそれでもやっぱり社会参加と言えると思うんですよ。それは病気が寛解してから考え方を変えるということにすると、いつになるかわからないし。今は苦しいだけなんで、いつだって今を生きる、今しかないということを幸せに感じるということ、そういうこと(が大事)なんだろうけれども。

人との信頼関係を結ぶというのはほんとに難しいことで、特にさっき言った盗聴器だの神だのとか妄想の中にある人というのはみんなとつながることができないんですよね。
で、人間の深層意識はつながっているというのは今おおかたの意見だから、世の中のこう、不条理な事件とか世相の不安感とかそういうのでもろに精神障害者はつき動かされて、自分は客観的に恵まれているのになんでこんなに苦しいんだろうっていう思いが切実に(ある)、特に夢の中でうなされたりする。今、食べるものにも困っていないし、病気はあるけどまあなんとかやっていける、なのになぜ今こんなにつらいんだろうなと思うというのは、大半なんですけどもね。」

●意識の持ち方を変えてみる

「一番簡単なのは意識の持ち方を変えるということなんだけども、自分をハッピーにするためには、やっぱり安心につながるし、感情に縛られると言うことはすごいつらいことだし。それから客観的に自分を見つめる理性的な目というものを培っていって、今ここにある不安はおまえの不安じゃないんだということ、今聞こえているこの悪口はおまえをいじめているんじゃないんだということを、もっと科学的にというかね、心理学なのかサイエンスなのかわからないけども。

困難な病気を克服するということは、克服までいかなくても病気とうまくつきあっていくということが、みんな優しい弱い人が多いから難しいんですよね。でも僕たちはそれにチャレンジする機会を与えられているということ。この統合失調症というのは好きこのんでなったわけじゃないとみんなは言うかもしれないけども、じゃなんのためにかといったら自分を成長させるためなんですね。

自分の魂をもっと成長させるために、みなさんいろんな試練がありますよね。統合失調症だけじゃなくていろんな病気があるし、病気だけの問題じゃなくて経済的な問題とか家族関係、人間関係の問題とかがあるけれども、例えばいろんな壁があるけれどもそれは全部自分を成長させるための踏み台として考えて、理性的にそれをどう対処するかということを考えていく。そうすると病気という壁を破ってジャンプできるというか、この病気というのをチャンスに変えて、病前よりもより豊かな人間生活が送れるようになるんじゃないかなあと、僕は思っているんですけれども。」

●今できることで幸せを探す

「けして寛解が目的というかね、もう治らないと言っているんじゃないですよ。治って世の中に出てくる人がやっぱり25%、50%という確率でいますからね、悲観する必要はないんだけども、やっぱり治りにくい人が25%ぐらいいるということを考えると、やっぱりそういう人に、じゃああんた病気が治ってからそれをしなさいと言ってしまうといつになるかわからないから、やっぱり今できることで幸せを探すということ。
今日が良い日ならばたぶん明日も良い日を送れるんじゃないかという自信につながるんですよね。だからいろんな楽しみを見つけて趣味をするとか。

まあ頑張りすぎるから病気になるという人もいるんですけども、統合失調症の場合は、ある程度頑張りがないと陰性症状でどんどん落ちていくので、やっぱり散歩をして空き缶を拾ったりとか、ペットボトルの蓋を集めたり、エコなこととか、人に優しい地球に優しいこととか、いろいろできることがあるじゃない。今ある環境でどれだけ楽しめるかということなんですよね。」

●苦しみは永遠には続かない

「僕の場合は、結婚して子どもができて、自己実現とまではいかないけども一生の仕事を得たということでいいんですけども、じゃあみんなに結婚を勧めるかというと、ちょっと迷う部分もあるんですよね。やっぱりそれなりに苦しみも増えるし、我慢しなけりゃならないことも増えてくるし、ましてや子どもなんか作ったらやっぱり重圧がかかってくるわけなんですよね。

僕がお話ししたのはあくまでも僕個人の問題で、今、苦しみのど真ん中にいる人にはその苦しみを楽しめと言ったって難しいことで、その苦しみの中に幸せを探せって言ったってそんなの無理なのに決まっているんだけども、ただ今のその苦しみがあるからこそ、そこを乗り越えたときに喜びが一層輝いて見える。我慢しなさいという言い方はおかしいけれども、まあ苦しみというのは一過性のもので、永遠に続くわけはないから、そういうときは薬を飲んで、お休みなさいという形で、明日があるさということで。

今後、薬物療法以外にいろんなセラピーで有効なものがあるとしたら、薬の副作用とかで悩んでいる人はそれで解決するかもしれないし、全然副作用のない薬も開発されるかもしれないし。とにかく希望をもって生きてれば、そのうち幸せになるっていうことだけは強調しておきたいなと思います。」

●つらい時期からの回復

「(一番つらかった時期は)そうですね、最後に会社を精算するときに自分何もできなかったんですよね。全部人にしてもらって。自分ではどうやって東京から病院まで行ったのかも記憶がないぐらいなんですけども。記憶にないだけで、実は思い出そうと思えば思い出せるんだけども、思い出したくないぐらいつらいですね。ほんとに異世界に放り込まれた形で、それも素晴らしい世界ならいいですけども、地獄の底に落とされたような感覚なんですよね。で、それが病気だともわからずにこの先どうしていこうという状態のときが、一番つらかったですね。

そのときは今ぐらい回復するなんてとても考えてもいなかったし、結婚するなんてことも考えてなかったし、まして(妻が)子どもを産むなんて全然考えてもいなかったことだから。」

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