統合失調症と向き合う

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倉田真奈美さん
倉田真奈美さん
(くらた まなみ)
41歳、夫と2人暮らし。22歳で精神科をはじめて受診。自殺未遂を繰り返すなど苦しみ続けたが、数年前から病気とのつき合い方が分かりかけてきたという。自己病名は、「統合失調感情障害・全力疾走ガス欠型・世話焼きアディクション」。調子を崩したときは短期入院で生活のバランスを取っている。現在は、WRAPやIPSなどのファシリテーターとして活躍中。
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収録後、「考え方が変わり、今は子どもを持つことを考えて薬を安全なものに変えたり、体質改善にウォーキングしたりしています。精神病の完治を、今信じています。そのために発病の引き金になった不妊症が避けて通れなくて、真っ正面から向き合いたいと思います。より前向きに自分の人生を選び取って自分でデザインして自分が主人公の生き方をしています。」とのメッセージが倉田さんから届いた。
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12統合失調症の方へのメッセージ

「もし病気になりたての人に言うとしたら、パソコンででもいいし、支援センターであるとか当事者会とか、早くどこかにつながってほしいなと思います。病院と家との往復、もしくは家の中だけだったら、治るものも治らないし。やっぱり、人間孤独というのは良くないと思うんですよね。

やっぱり人と触れ合うことでつながりが生まれてきて、そこから元気に回復したり…。もちろん辛い思いをすることもあるけれども、それはしないよりしたほうが、私は良いと思うんですよね。人とのつながりが何もないより、傷ついてもいいから誰か人とのつながりがあるほうが、私は、人間として生きている甲斐があると思うんですよね。

で、長く病気を患っている方に言いたいことは、いつからでもリカバリー、元気に回復することはできるということを信じてほしい。まず自分が信じてあげないと、そういうことは始まらないので、自分で、必ず自分は元気になれるんだとか、必ず希望が持てることが何かあるはずだとか、必ず明日は良いことがあるとか、そう思って行動を起こしてみる。なんでもいいんです。何かの講演会に足を運ぶでも良いし、友達に電話をかけてみるとかでも良いし、支援センターに一歩足を踏み出して行ってみるとか、保健師さんと連絡を取ってみるとか、取りあえず現状で、何か不満がある方とかは、アクションを起こしてほしいなあと思って…。

それで、あきらめないで。確かに病気を根絶したり撲滅することはできないんですよ。だから、病気も自分の一部なんだということで、病気と仲良く共存しながら折り合いをつけてやっていく。そういうふうにやっていけたら、思うようになれたら、病気と自分との距離感というのが少し良い感じになるかなと思います。」

●ご家族へのメッセージ

「そうですね、母にメッセージを。私の母は、とても優しくて、いつも実家に行ったらお惣菜をくれたり、ほんとに優しい母だけれども、いかんせん、私の精神病に理解がなくて。夫が当事者だけれども、今の夫の、当事者との結婚をいまだに認めていないというか、反対している。そういう状況でも、やっぱり私が実家に帰るとお惣菜を二人分用意してくれて。ひじき豆だとか切り干し大根だとか、そういうお袋の味を作って渡してくれる母なんですよ。できたらその母に、自分が当事者として生きていて、お母さんの娘として生まれてほんとに良かった、お母さんもお母さんなりに愛してくれて、ほんとにありがとうと言いたいし…。

それは、内観療法で気づいたことなんですけれども。それまで母に対する恨みがましい気持ちがあって、母は、私のことを愛していないんじゃないか、双子の兄のほうを愛しているんじゃないかとか思っていたんだけれども、そんなことはなくて、お母さんも私のことを愛してくれていて、一所懸命育ててくれていたんだと、ほんとに今は思うし。私がこうやって当事者活動をしているということも、ゆくゆくは分かってもらって、お母さんにも、こういう娘だけれども誇りに思ってとは言わないけれども、お母さんの娘として精一杯生きているよ、と言えたら良いなと思います。このビデオを観るかどうか分からないけれども、お母さんに伝えられる日が来たら良いなと思います。」

●家族に留意してほしいこと

「そうですね、取りあえず、私の場合は当事者としてすごく元気になっちゃっているから、その当事者活動を妨害したり引き止めるのではなくて、子どもが好きに生きることを許してほしいというのと、あと、老後の問題ですよね。

夫の母は、私たち夫婦が後見人みたいにお世話をすることになっているんだけれども、うちの親は、結構、自分たちでやるからという感じで自立をしてくれていて、『真奈美にはお世話にならないから、自分たちでどちらかが悪くなったらどちらかが看病・介護して、どちらか死んだら、老人ホームに入るから』なんて気丈なことを言っている。それもいいけれども、私的にはホームヘルパーさんを使いながら、親と関わっていって、在宅で看ていきたいなと。私は自分がホームヘルパーの資格を持っているから、そういうふうに思うんだけれども。親が私を頼りきって、真奈美、真奈美と言って介護を、子どもを持っていない精神病の娘だから暇だろうから看てくれみたいな感じで頼られるのも困るけれども、さりとて、『お前は病気だからもう除外除外!』みたいな感じじゃなくて、つかず離れずの良い関係で、生活のパターンとか、考え方とか価値観をお互い尊重しながら生活できたら良いかなと思うので…。

自分で自分の食料を自分で獲れるような人間にする? 今まで福祉とか親とかでも、サービスといったらできあがった食料を渡して、食べなさいと、むしろ口の中まで入れてくれるようなサービスだったと思うんですよね。親でも、福祉とか病院とかでもね。そうじゃなくて、最初は自分で料理をするとか買い物に行くところから、例えば、生活全般のことで。やがては自分の心の畑で、自分で種をまいて耕して、自分の心の畑で育った作物で自給自足ができて、で、ゆくゆくはそれを近所にお裾分けできるぐらいの人間になってくれる、そういう接し方を家族は。自分で自分のことができる、自立できるように仕向けるようにしたほうが、子どものためかなあと思って…。かわいそうだからかわいそうだからと、お小遣いをあげすぎるとか、ご飯も作ってあげる服も洗濯してあげるとか、ごみも片付けてあげるとか、それをあまりしすぎるとあとで困るのは本人だから、それはちょっと違うんじゃないかなあと思いますけどもね。」

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