統合失調症と向き合う

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和田公一さん
和田公一さん
(わだ きみかず)
43歳。17歳の時に精神症状を自覚する。28歳の時に精神科を受診、現在の通院先が6つ目になる。同じく精神疾患を持つ妻、そして今年5歳になる娘との3人暮らし。娘は、2歳3か月まで乳児院に預けた。19歳〜33歳まで一般就労をし、営業マンとして社内トップセールスを達成したこともあるが、症状との兼ね合いから退職。その後、何度か就労に挑戦したがうまくいかず、現在は、当事者活動を“仕事”と考え活動中。子育てにも勤しんでいる。
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10症状安定のターニング・ポイント
Q.自分らしく生きられると思えたのはいつ頃からですか

「2007年のセミナーを聞いて、ちょっと自分の将来に光が見えて、で、当事者として生きていく。要するに、自分が自分のままで納得して生きられる道がありそうだぞというところが、2007年に始まり…。ただ、家内の妊娠騒動があって、1年間はそれで潰れたんですね、ほぼ。ま、デイケアには通っていましたけども、いわゆる仕事的なことはしていませんでした。

1年寝かせたあとに、いよいよ活動しようかということで、『ほっとぽっと』の門を叩いて、その中で活動して、で、だんだんだんだんどんどんのめり込んでいって…。で、また、自分の価値を認めてくれる人達が(いる)、要するに期待されたいんでしょう、みんなたぶん期待されたいと思うんですよね、やっぱり。

だから、先ほど第7回のセミナーを見てそういう気持ちになったと言いましたけども、僕、第11回目のセミナーで実行委員長をやっているんですよ。12回目(のセミナー)では副実行委員長をやっているし。自分が求められるようになった2007年以降からは、子どもを引き取ってからだいぶ自粛するようになったんですけども、基本的には仕事が好きなので、その範囲の中で、現在進行形という中ではあるんですけれども、いつのまにか、今の生き方に納得すること。あと大事なこととして、自立についての定義ですね。」

Q.公一さんが考える自立とは?

「活動の中で講演活動というのがあるんだけども、その中で、時折僕が話す話ですけれども、『新しい自立』というふうな言い方を僕はしていて…。

親の立場からすれば、自立というと、やっぱり親元から離れて、いろいろ一人暮らしをしたりとか、お金を稼いだりとか…。そこを目指して、当事者として自立を目指している人は多くいると思うし、否定もしません。ただ、私の場合は、そうじゃない。やっぱり自分の過去も振り返って、納得できないことに慣れてしまう生き方というのは、僕は、なんて言うのかな、本来あるべき人間の姿じゃないと、言い切る、そこまで言うかという感じもちょっとするけど。

特に営業をやっていたので。営業って数字ですから、例えばものを売る時も、同じぐらいの製品、性能のものでも、1円でも高いほうを売ろうとするわけですよね。で、やっぱり若い頃というのは、そういうことに対して敏感で、なんか悪いことをしているような気持ちになったりということがありました。20代前半の僕は、そういうのに苦しみましたね。そういう生き方でいいのかな。

やっぱりいつの間にかそういうものに免疫ができちゃって、悪いことをしているとか(の意識がなく)、もう数字のためならなんでもするみたいなところまで行っていた自分を考えると、会社からは評価されていても、人間としてどうかという部分で、だったら今のように、社会貢献を。自己満足もかなりあるんですけど。あ、でも、自己満足って非常に大事なんです。意外と大事であって、自分に酔ったりすることも、実は大事だったりもするんだけど。自己満足かもしれないけど、自分の感受性の、感じるままに発言をし、また納得した生き方を、自分のプロデュースによって実感する生き方と出会い、それをまた自分の努力で身につけていく生活のほうが、ほうがというか、ことが実は自立なんじゃないかというふうなことを、時々しゃべっていて、またその思想が、今の僕を支えていると思います。」

Q.症状コントロールで大切なものは?

「そうですね、やっぱり僕の場合、精神論、哲学論になっちゃうんだけども、薬を飲めば治るものもたしかにあるかもしれないですけども、例えば孤独とか孤立というのは薬を飲んでも治らないわけですよね。だから僕が一番辛かった時期というのは、やっぱり孤立していた時代で、そういう時というのは、症状も重くなるという印象を持っています。実際そうだったと思います。

現在は、家族もいるし、仲間もいるので、あと、仕事、活動。『仕事』という言葉を広辞苑で引くと、実は『お金を稼ぐ』とは書いてなくて、『やること、やらなくちゃいけないこと』と書いてある意味でも、今、仕事という言葉を頻繁に使っているんですけども、そういうものがあるから、ある程度、症状による生きづらさとか、副作用もありますけれども、なんて言うんだろう、ちゃんと前を向いて生きられるというのは、薬のせいじゃなくて、生活とか支えてくれる人とかの存在が、やっぱりベースにあるから安定している。そういうバックボーンがなかったら、まだ薬を変えたりとか、そういう方向に流れていっていたかもしれないです。

だから、薬自体は、急性期の方とか、非常に症状が、なんだろう、他傷(他害)自傷とかそういった(恐れのある)方には、やっぱり必要なのかもしれないけれども、そういうものより、人との関わりがうまくいくこと。で、また納得した、そのことについて自分が納得できているということが、一番の治療の方法。そう言うと根性論なのかというところに行っちゃうんだけれども、ただそれは、すごく否定できない大きな部分で。だから、薬は飲んでいるけども、どこで効いているのかというのも分かんないし、むしろやっぱり今の生き方ができているから安定しているというふうに解釈しています。」

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