統合失調症と向き合う

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コラム「なぞを追う」夏苅郁子さん 「動物、大好き!(後編)

動物好きが、アンケートをしたら・・・

私は、全国の精神科医療ユーザーの方々に「主治医のコミュニケーション能力を評価する」アンケート調査を昨年実施した。このコラムの読者の中にもご協力いただいた方もおられると思う。全国から7,000通を超える回答をいただいた。協力してくださった家族会やNPOの中には、アンケート用紙の発送から回収まで手弁当で手伝ってくださった団体・個人も多く、心から御礼申し上げたい。

この調査は、日本疫学会や東京大学で倫理審査を通った学術的な調査なのだが、一つだけ、大学の研究者なら思いつかないであろう質問が入っている。

それは、「あなたの主治医を動物にたとえたら、何になりますか?」という質問だ。動物好きがアンケート調査をすると、こんな質問まで作ってしまうのかと自分でもあきれているが、皆さん、真面目にこの質問と向き合っていただき二重の感謝である。

寄せられた回答の中で多かったのは、日常で良く見るメジャー系の生き物「馬・牛・クマ・サル」が上位にランクされたが、「コウモリ、ウーパールーパー、ふぐ、カブトムシ、カマキリ、カピバラ」などのマイナー系の生き物も奮闘した。中には「ねこを被ったライオン、陸を歩くアヒル、宇宙からきた猿、神社のこま犬、プライドの高いタヌキ、片方の翼をなくした白いハト」など、書き手の想像力に感心する記述もあった。

こうした記述は、読んでいて思わずそのドクターを想像してしまう。「神社のこま犬」のようなドクター、たしかにいるぞ!と、アンケートの回答を観ながら一人ニヤニヤしている私だった。

ちなみに、私が医大生時代にお世話になった精神科の主治医は、恰幅が良く頭がテカテカと禿げて光ったおじさんで、動物なら「怒りっぽいタヌキ」だろうか……。でも、もし今その主治医が目の前にいたら、とてもそんな話はできそうにない。私の主治医は教授で、黒を白と言っても誰も異議を唱えられないくらいその当時の教授の権威は凄かった。

私がこの質問を考えたのは、動物好きな理由以外にこの主治医の敷居があまりにも高かったことがあると思う。

自分の体に関する大切なことなのだから、薬のことなど疑問に思ったことはビクビクせずに主治医に質問したかったなぁ……と今でも思っている。そして、そう思う人は現代でも大勢いるのではないだろうか?

アンケートの回答には、単に動物の名前だけではなく形容詞がついているのがおもしろい。「ネコを被ったライオン」「気の弱いトラ」など、主治医の裏の顔を患者さんやご家族はきちんと見抜いていると思った。

こうした形容詞も含めて、このアンケートを全国の精神科医が「広いユーモアの心を持って」読んでくれることを願っている。そして、ユーモアを通して診察の場でも本音が言えるように患者-医師関係が変化することができれば、アンケートに協力していただいた7,000人を超える方々への何よりの御礼となると思う。

ちなみに……、もし今主治医を選べるなら、なるべく「おいしそうな」主治医がいいなぁと、摂食障害欠陥治癒の私は考えている。そうすると、やっぱり私の主治医だったあのタヌキ先生になるのかなぁ、、

主治医という存在は、何年たっても大きいですね。

皆さんは、かかりつけ医をどんな動物にたとえますか?