「統合失調症の方に限らないですけれども、これは医師として当たり前のことなんですが、感情が、毎日同じと限らなくて、調子が良いときもあれば悪いときもあったり、ちょっとイライラしやすかったり、あるいは非常に穏やかだったりするというのは人間誰しももっているわけなんですけれども、一応我々はプロフェッショナルなので、患者さんが、今日何を話そうかだとか、先生どんな雰囲気かなみたいに思いながら来られるわけですよね。そうすると患者さんに予め不安を与えないということが大事なわけですよね。そうするといつも同じ雰囲気というか、いつも同じ感情の動きで、態度って言うんですかね、それが一番大事だと思っていて。そうすると患者さんは予め何を話そうかなとか安心して考えられるし、(診察室に)入ってきたあとも、安心して自分のおっしゃりたいことを話せて、その中にはときどき予想していないぐらいにすごく深刻な話をされることもありますので、そういう見逃せないことをちゃんと言っていただけるようになるには、普段の態度とかが変化しないのが大事だと思いますね。」
「大勢いらっしゃいますけど、やはり研修医のときに、統合失調症になって間もないような患者さんがいらっしゃって。その時にその方が回復する過程を、病棟で毎日のように接して関わっていて、退院なさったときに、それまでのみずみずしい状態というか、社会的な予後がまだ保たれた状態から少しだけ社会的な機能レベルが落ちてしまった段階で退院して行かれる、そういう経過を目の当たりにしました。そのときは、まだ非定型抗精神病薬が、わが国で使えていない時期だったんですけども、そういう統合失調症の方を、研修の一番最初の頃に見たので、すごく強烈な印象に残っていまして。で、あまり自分で、頭の中で言語化したことがなかったんですけど、たぶんそれが、今、自分が臨床したり研究しているテーマとまったくつながっているので、そういうのが(自分の診療の姿勢に)大きな影響をたぶん与えたんだろうというふうに思います。
あとは、デイホスピタルという場所があって、統合失調症をもつ方が圧倒的に多いんですけど、その方が外来で通っていて、生活している様子に混じるんですね。あとはときどき合宿とかに一緒について行ったりするんですけど、そういう方との、なんて言うんでしょう、寝食を共にするみたいな経験は、医療者にとっては大変重要な経験だと思って、そういうのはすごく役に立っていまして。あの、統合失調症の方とウマが合うような気が自分でしているんですけれど。そういうことは非常に役立っていると思いますけども。」