コラム「なぞを追う」夏苅郁子さん 「7つの金貨(前編)」
私が落ち込んだ時にすること
以前、手相占いのことを書いたことがあるが、もう一つ私の好きな占いがある。タロット・カードだ。
頭から信じ込んでいるわけではないが、このカードの絵柄そのものに「物語性」があるので見ていておもしろい。
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タロット・カードの中でも、私の一番好きなカードは「金貨の7」である(右図)。
すごく落ち込んでいた時にこのカードを見つけ、理由は分からないが凄く心に入ってきたので意味を調べたところ、ハッとさせられた。人に説教されるのは感情が走るが、カードの絵柄から意味を知ると素直に心に入ってくる。ロールシャッハテストなどの投映法と呼ばれる心理検査も、見る人の状況やその時の気持ちで絵の意味や重みがいろいろに反映される。私はこのカードを通して投映法を無意識に行っていたのだ。
「金貨の7」のカードには、自分が丹精込めて育てた作物を眺めている人が描かれているのだが、彼はうかない顔をして下を向いている。
「一生懸命耕したのに、どうしてこんな出来損ないの作物になってしまったのだろう」と、ため息が聞こえてきそうな絵である。実はカードを見ている人には作物の陰にある光輝く「7つの金貨」が見えているのだが、耕している当の本人には今は金貨が見えていないのだろう。
実った作物はこれまで苦労してきた成果を表しているのだが、絵の主人公はその成果にまったく納得していない。「期待外れ」と思いがっかりしているのだ。
このカードは、現状に不満を抱きつつも目先の利益に固執するあまり現状から抜け出せない状況を暗示しているそうだ。 人間が飛躍するためには、目先の利益より長期的な視点に立って目標を達成するために何をすべきかを考える必要がある。このカードを引いた人に、「そこに気づきなさい」とカードは示唆しているのだ。
人が落ち込むのは、「期待が大きすぎた」ことが多い。多くの心の病は、要求水準を下げると良くなる、というのは一理あると思う。
このカードを知ってからは、私は落ち込んだ時にはこのカードを思い出すことにしている。
自分が努力したことを作物の出来・不出来とは関係なく素直に評価して、作物がいつか「自分にとっての金貨」に変わるために努力しようと思わせてくれるカードである。
お金持ちになるコツも、このあたりに隠れていそうな気がする。
統合失調症の回復に尽力されている東洋大学の白石裕巳先生が「その人の人生の最期の時が、その病気の結果となる」と、ある家族会の講演で述べておられた。私も、人生の最期の時に7つの金貨が見つけられるような、そんな人生の結果を迎えたい。それが、私のお金持ちである。
皆さんは、どんなお金持ちになりたいですか?