がんと向き合う

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竹内恒雄 さん
(たけうち・つねお)
公益社団法人 日本オストミー協会(JOA) 事務局長
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1943年生まれ。非鉄鉱メーカー在職中の1991年、会社の健康診断がきっかけで、家の近くの病院を受診。検査で直腸がんが見つかる。翌月、直腸がん切除術を受け、人工肛門を造設。その後約1年半、抗がん剤を服用。現在は年1回検査で経過観察。2011年3月11日の震災発生後、JOAは日本ストーマ用品協会と協力して、被災地へのストーマ装具支援等の陣頭指揮をとっている。
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3術後の抗がん剤治療

「その後は結局、抗がん剤は5-FUといういちばん軽いのを1 年半ぐらい飲んでいました。私は日本オストミー協会の東京支部の会員になっていて、そこでたまたま抗がん剤の話が出て、『飲んでもう1年半にもなる』と言うと、『そんなものすぐやめろ』という人や、『私はまだ飲んでいる』とか、長い人は『5年も飲んでいる』とか、いろんな人がいました。でも『やめろ』と言われたから『ああそうか』と思って、『もう薬はいいです』と主治医に言うと、『そうだね』と言われて止めたという感じでした。

やはり薬というのは多少副作用が出るし、抗がん剤は特に副作用が多いようですが、僕の場合はそんなに影響(副作用)もなく止めました。まあまあよかったかなと思います。」

●会社に復帰する

「週末に病院から帰って、翌月曜日からとにかく会社に行きました。平成3年はバブルがはじけてだんだん状況が厳しくなってきたときでした。だから早く行かないと、会社は存続していても席がないという可能性がありました。

同じセクションには戻ったけれども、最初はやはり(人工肛門の)装具(の具合)がわからないから、それなりのもの(便)をお腹に抱えながら一所懸命、仕事に駆けずり回っていました。

装具は病院で教えられた“ワンピース”という一体型のものでしたが、急に便が出た場合、装具の貼り方が悪いとすぐに外れてしまったりして、たいへんでした。

前日にお風呂に入って腹を洗って、装具をつけて朝出勤するのですが、その途中でいつも装具が外れてしまって、なんだか知らないけれど、もうひっちゃかめっちゃかな生活でしたよ。それを東京支部の役員会で話すと、『ワンピースを使うからだよ』と。装具にツーピースというものがあることも知らなかったので、すぐにそれに取り替えたらまあまあ落ち着きました。

装具を(ワンピース型からツーピース型に)変えたことによって安定はしたけれど、(仕事が)営業で都内を主体に回っていましたから、JRなどどこにトイレがあるというのはたえず見ながら歩いていました。特にお客さんに会いに行ったときに、そんな(装具が外れるような)ことになっては困るので、気は遣っていました。」

●人工肛門に慣れるまで

「とにかく装具をツーピース型に変えた時点で、『だいたいこんなものだ』と思えるようになりました。そうは言いながらも、たまに装具が外れていたりすることもあるので、それはちょっとやばいのですが。人工肛門だということを忘れて飲んだり食べたりしていると、突然何か苦しくなって、『たいへんだ。トイレに行かなきゃいけない』ということになるのです。誰でも何回かはトラブってえらい目に遭って、だんだんだんだん慣れていくのです。最初は動転しているけれど、『だいたいこんなものか』と思えるようになれば、いちばんよいのだと思います。」

●自分にあった装具を探すこと

「今でも電話で相談がくるのですが、『装具の管理がちゃんとできたら、健常者と同じ通常の生活ができますよ、そんなに問題はないですよ』と一所懸命言っています。装具の情報がないと、わからないじゃないですか。医者(病院)が使っていたものがいちばんで、これしかないと思っているけれど、メーカーもいっぱいあるし、装具の種類もいろいろあるのです。だから『できるだけ自分に合う装具を探しなさい』と。あとできれば販売店で何枚かもらうとわかりやすいです。もらえない場合は、『自分で何種類か集めて(買って)試してみたほうがいいですよ』と話しています。」