がんと向き合う

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野田 祐紀子さん
野田 祐紀子さん
(のだ・ゆきこ)
九州大学病院
麻酔科蘇生科外来医長
同病院がんセンター緩和ケアチームのコアメンバーのひとり(身体症状緩和担当)。1997年より同病院ペインクリニックにて、がん性疼痛、神経因性疼痛、慢性疼痛など各種痛みの治療に携わるなか、がん治療と並行して早期から緩和ケアを行うことの重要性を認識し、日々奮闘中。
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4まずは痛みを抑えること

「やはり痛みがあって気分が滅入ってくると、どうしても治療に対して前向きになれず、いい影響が出てこないことがありますので、やはり痛みを取って、できるだけ前向きな気持ちで治療に臨んでいただくのがいいと考えています。 医療用麻薬に抵抗(感)があるという患者さんはおられて、私どもは『(患者さんが)麻薬というものに抵抗があるようなので、麻薬について説明してください』と請われることが多く、中毒になるのではないかとか、頭がおかしくなるのではないかというふうおっしゃられる患者さんは多いです。しかし、痛みがない場合に医療用麻薬を使うといわゆる中毒のようになってしまうことがありますが、痛みがある方が痛みを治療するために正しい用法・用量を守る分には、決して中毒症状が出ることはありません。むしろ痛みを抑えることで、その方らしい生活ができるという点で非常に有効なので、痛みを我慢せずにぜひお薬を使ってくださいと説明しています。薬を増量することが、イコールがんの進行ということではありませんので、痛みに応じた適切な薬の量を使っていただくことが大事だと思います。 確かにひと昔前は、麻薬というといよいよ治療が効かなくなったときの最後の手段として使われるものというイメージがありましたが、患者さんはがんという診断がついた初期の頃から、痛みやいろいろな苦痛を抱えたりしておられますので、早期から痛みや苦しみを取っていくことが大事であると最近は言われています。痛みや苦しみというのは人格を変えてしまうことがあり、たとえば私どものところに来られた患者さんが最初は非常に固い顔でとてもつっけんどんなしゃべり方をされて、怖い方なのかなと思ったりすることがありますが、実際治療を進めて、お話を聞いて、お薬を出して痛みが取れてくると、ものすごく穏やかになられることがあり、『あぁこちらが本来の姿だったんだな』と思うことがあります。そのように痛みや苦しみというのは、その方らしい生活を送ることを邪魔してしまいますので、早い段階から積極的にその苦痛を取っていくことが重要であると考えています。」