統合失調症と向き合う

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高森信子さん
高森 信子さん
(たかもり・のぶこ)
こころの相談員/SSTリーダー
小学校や幼稚園の教師を経て、子どものこころのアートセラピストとして、幼児・学生の美術教育に15年携わる。1985年よりカウンセラーとして活動を始め、その後東京大学デイホスピタルでのSSTリーダー研修を経て、1989年より地域作業所、デイケア、家族会などで当事者や家族のためのSSTリーダーとして活動中。最近では、保健関係者や他分野からの依頼もあり、年間約300回のSSTのために全国に出向いている。著書に「家族が知りたい統合失調症への対応Q&A」「心病む人のための高森流コミュニケーションQ&A」(いずれも日本評論社)などがある。
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14ご家族へのメッセージ

「病気とうまくつき合うということですよね。この病気の性質、様子、成り立ち、いろんな病気に関する情報を、やっぱりきちんと受け取ってほしいですね。今は、脳の病気というところで、お薬もできている時代ですよね。昔は不治の病と言って、薬がなかったからね、ほんとに辛い時代だったんですが、今はお薬が開発されて、これからもどんどん良いお薬が出てくると思いますよね。なので、希望を持ってほしいと思います。

1人のお母さんがね、初発の時にお子さんを連れて主治医の先生のところに始めて行った時です。行って1時間たった時に先生が、『お母さん、息子さんは統合失調症です。今まで息子さんにかけていた夢、これから将来にかけるであろう夢を、今日を境に全部捨ててください』と言われたと言うんです。お母さんはその先生の言葉がすごくショックだったけれども、先生は専門家だからというので、とにかく夢を捨てた。ついでに子どもの夢まで、子どもが何々したいと言うと、それも全部摘み取ってきたと言うんです。だから、その時にもっといろんな人の話を聞いていれば、自分のフィルター、夢を摘み取るというフィルターがかからずに、もっと息子さんが自由に生きていける道というのを見つけられたんじゃないかなと、そのお母さんが言っていましたよね。

ある面では、先生が言ったその言葉、『夢を捨ててください』いうことは、期待をはずしてくださいということで、大事なことなんだけれども、お母さんは洗脳されたように、息子さんの夢まで摘み取ってしまったということがあるんですよね。

何々したいというのは、回復してくれば健康な人間ならば、必ず欲求としてあるわけ。陰性症状の時は欲求がないんですよ。だから欲求が出てくるということは素晴らしいこと。欲求実現のために取りあえず何をすれば良いかなというのが、差し当たってやる生活の目標になりますよね。だから、まずお病気の全体像というか、正しい情報を知ってほしい。正しい勉強をしてほしいということがありますよね。」

●必要なものを行政に伝える

「今は、インターネットでいろんな情報もあるので、そこから情報をもらうという人もいらっしゃる。偉いですよ。自分がやっぱり病気のことを知りたいという熱意ですものね。それから本で勉強するというのもあるでしょうね。それから地域の情報は、やっぱり行政が握っている情報がありますよね。なければないで、『それがないんですか』と言うことで、あるようになる可能性があります。世間体を考えて、地域に顔を出したくないというご家族とか当事者がいるんですよね。そしたら地域が何にも活性化しない。何にも要求がないんだとなったら、動かないですよね。だからみなさんが、じかに行政の場へ行って、『こういうものを作ってください。こういうものがほしいんです。こういうものありませんか』と訴える場でもある。行政を動かすというのは、みなさんの力だと思いますよね。

ボランティア協会というものもあって、そこもかなり助けてくれる方達がいらっしゃいます。そういう所にも、電車へ乗れないというと、ボランティアの方が電車につき添ってくれるのも助かりますよね。そういう意味で、とにかく助けを求めに外へ出てください。家の中だけで何とかしようというのは無理。そういういうことが、ご家族も当事者も必要なことかと思います。」

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