統合失調症と向き合う

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NPO法人事務局長さん
NPO法人事務局長さん
(ニックネーム)
52歳。19歳(大学1年生)のときに入院。統合失調症と向き合いながら、現在、NPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会(通称、ゼンセイネット)事務局長として活動している。会では精神医療ユーザー・アンケートを実施し、その結果を書籍にまとめている。今年も『ユーザー1000人の声と現状シリーズ 2009年度版 誰でもできる精神病の予防とその対策 らくらく統計読本パート2』が6月に発行された。現在、妻、子ども2人の4人暮らし。
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5自立とは

「そのことがわからなくて、調査しました。僕らはやっぱり自分たちでわからなかったら、調査をする、ちゃんと。統計調査をやっている専門ですので。当事者間の調査をしましたら、自立っていうのはまず、就労ではない。みなさんが考えているのとは違いました。自立は治療でもなかった、病気が治ることではなかった。自立って何か、だんだんわかってきたんですね。やっぱり分離することなんですね。要するに依存関係から分離されることが自立の一歩なんです(図2)。

これは、笑われるかもしれないですけど、うちのメンバーの中でこういう話題があるんです。「親亡き調査」をしたあとに、親亡きあと困ることはないって(いう)、調査(結果)が、結構一番多かったんです。自分の身の回りの世話ができるっていうのは、実際親亡きあとの人たちの回答で多かったんですが、そのとき、僕らは何が良いっていったらね、俺らは親が今いなくて良かったな、親がいないから自分たちは自分の決定で、自分の責任でできると。自分の決めたことを自分の責任でできるのは親がいないせいだと。結局そうです、いないから自分で決めて、社会に生きるというのは、一人間として、自分の責任を取っていくことです。それがあるから僕らは一生できて。

頼りないっていうのはあるんですけど、まず、自分の足で立つことだと思うんです。それはお金が、なんていうのか、稼げなくてもいいんです。今年の調査で分離のことも調べてみましたけど、年金だったり、親の小遣いだったり生活保護だったりして、分離している人が多いです(図3)。で実際に収入を統計で取りましたけど、分離している方と家族と生活している方は、1万円ちょっとしか差がないんですよ、収入に。なのにちゃんと世代分離されているんですね。その人たちはかなりね、内容に自分が生きていくということがしっかりしているんですね。

やはり自立っていうふうにいったらまず、自分の責任で生きることだと思うんです。親元だったり誰か施設の元だったりするということは、自分の責任で生きている実感が持てないから、なんとなくこう、自分に返ってくるものが感じられないのではないかっていうのが、ま、一方的かもしれませんけど、私はそんな気がいたします。」

図2:あなたにとって自立(自立の定義)とは何ですか。
N=781(複数回答)
(第4 精神医療ユ回ーザー調査報告書2009年版、ゼンセイネットより)

自立(自立の定義)とは? 人数
仕事がある 344 44.0
単身生活である(一人暮らし) 325 41.6
金銭管理ができる 261 33.4
病院や施設から出て地域で暮らすこと 192 24.6
家族に金銭的に依存していない 180 23.0
失敗したときや、トラブルが起きたとき自己責任を取ること 177 22.7
生活の中で自己決定権がある 160 20.5
両親と生活分離すること 134 17.2
配偶者(同棲者)がいること 100 12.8
両親と外出できること 13 1.7
その他の定義 44 5.6

図3:住居分離者と非住居分離者の生活の資金源(収入源)比較
(第4回 精神医療ユーザー調査報告書2009年版、ゼンセイネットより)


●不安は当たり前

「不安ですよ、そりゃー、不安ですよ。例えば事業運営するでしょう、調査やってて、いつ上がるかなとか、原稿出なくて、一緒にやってるメンバーに「ね、いつになったらこれ返ってくる」なんて大きな声出してですね、「出すんなら出せよ」とかやりますよ、ほんとに。

でも、不安は悪いことではないと思うんです。不安だからこそどうにかしようとするわけですよ。不安だから、要するに縮こまるんじゃなくて、不安だから不安を解消するためにこういうことに手をつけ、こういうことに手をつけ、これに手をつける、そしてその先にある目的を(に向かって)突き進むわけですよね。そのために不安は別にあって当たり前のことだし、そのために少しずつ、手がかりやらがついてくると。不安のない人生ありませんし、不安あってこそ進歩する、と私は思っています。」

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