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池淵恵美さん
池淵恵美さん
(いけぶち えみ)
帝京大学医学部精神神経科学部講座主任教授
1978年東京大学医学部を卒業し、同年4月に東大病院精神神経科勤務。1992年4月帝京大学医学部精神神経科に勤務し、現在に至る。2005年1月より帝京大学医学部精神神経科教授。医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。統合失調症の心理社会的治療、精神障害リハビリテーション、認知行動療法を研究している。
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3家族のリカバリー
Q.家族がリカバリーするためのアドバイスをいただけますか

「ご家族が、今、幸いにもいっぱい勉強する機会がありますよね。家族会とかもあるし、テキストもたくさんあるし、ネットでもいろんな情報があるので、良い情報を見つけて、勉強してほしいなぁと思うのです。どうやって回復していくか、いろんな情報や例などをご家族の方に勉強していただいて、希望を持つことはとても大事です。近くに家族会があったら、ぜひ積極的に参加してほしいなぁと思うのです。

そうすると、ずいぶん、ある程度、お子さんが辛そうな状態でも、もしかしたらこんなふうに良くなるかなぁと、ちょっと冷静に見られるようになったり…。声かけの仕方なども、先輩のお母さんに教えていただいて、『あ、こんなやり方をするとちょっと良いみたいだ』とかがあるので、ぜひそのようにして情報を得てほしいなぁと思うのです。

それで、ネットは、いろいろな情報が混ざっていて、玉石混淆(ぎょくせきこんこう)ですかね。だから、それこそ『統合失調症』と検索すると『明日から薬なしでも生活できるようになりますよ』みたいなサイトがあったりするので、最初は、やはりしっかりした出版されたものとか、しっかりした家族会とか、そういうところから入っていかれるほうがいいかなぁと思います。」

Q.親が病気になった場合の子どもへの支援状況はいかがでしょうか

「そういうお子さんへの支援は、本当に今、なかなかされていませんけども、私達、考えていかないといけないかなと思いますよね。

よく聞くのは、お家で、入院しているお母さんのことがもうなかったことになっているので、誰にもお母さんがいない寂しい気持ちを話せなかったとか、家にいらっしゃって具合が悪い、ぶつぶつ独り言を言っている、そういうお母さんのことを怖いと思うけれども、みんなもお母さんのことは、『もうあんなだからしょうがない』というふうに疎外しているので、自分も『学校の先生にも友達にも、お母さんのことが怖いし、どうしていいか分からないけど話せなかった』とか、そういう話をよく聞くのです。

だから、周りの大人、親戚のおばさんでもいいし、お母さんの病院の関係者でもいいし、学校の関係者でもいいし、事情が分かっていたら、子どもが何か困っていないか、辛い気持ちを持っていないか、大人が聞いてあげる。で、その子どもの気持ちを少し守ってあげるということがすごく大事なのではと思うのです。

そういう中でお子さんが成長していく過程で、どうやって親の病気を理解していくかは、簡単ではないですよね。今、夏苅郁子先生が、あちらこちらでご本を書かれたりして、本当にずいぶん(時間が)かかったということです。やはりそうだと思うのです。だから、お子さん本人が、周りの大人、誰かしらいろんな人がサポートして、成長していって、そのうちにご本人がしっかり力をつけていった時にというふうにして、長い目で見たほうがいいのではないかなと思うのです。もちろん、『どういう病気だ』ということは率直に伝える必要はあると思うのですけど。

私が関わったケースでも、お母さんがずぅっと長く病気をされていて、妄想に基づいてお子さんを外に出さないということが長年あったので、お子さんもだんだん病気になってしまって、家族で危機だったのですね。で、お子さんが入院して、お母さんも入院してということだったのです。

で、お子さんはやはり、最初、お母さんが大きな怪獣になって自分を押さえている絵を描いたり……。よほど怖かったのだということだった。だからお子さんがまず回復すること。そのケースは幸いお子さんが回復して、お母さんも回復して、お母さんは社会人として働いておられるし、お子さんも大学生で、運動したり勉強したりと両方回復してきたのです。

お子さんは、実は親戚に預けて、その親戚のお家から、今は学生寮に入って大学に行っているのですけど、まだお母さんとは再会していないのです。お子さんが受け入れるようになるタイミングが来ればいいねえと、お父さんと相談しながら(サポートしているの)ですが。

それこそ東日本大震災があった時に、お母さん、私の患者さんですけども、あんなことがあった時に、『子どもに、大丈夫?無事だった?と連絡を取りたいけれども、連絡を取ってもいいですか』と、お母さん、ちゃんとわきまえてくださって、退院してからもお子さんと連絡を取らないでいてくださったのです。けれども、大震災があった時に、そういうことを言われたので、『そうですよねぇ、そういうことできるかどうか聞いてみましょう』と、お子さんには別の治療者がついていたので、『どうですかぁ?』と私も聞いてみたのだけど、まだちょっと早いかなぁということがあったので、ちょっと辛かったのですけど、もう少し待ちましょうかねと。そのうち、ご家族みんなでお食事のできる日がくるかなぁという感じですよね。

だから、気長に、お子さんのやはり小さい頃から育てられた環境で受けたダメージはとても大きいので、簡単にはいかないというふうに思ったほうがいいと思います。」

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