「昭和60年(1985年)8月ですね。ま、幻聴、追跡妄想とか、誇大妄想、恋愛妄想、被害妄想、加害妄想等があったので、受診しました。32歳ですね。
(恋愛妄想は)女の子が、僕のことを好きなんじゃないかと思ったり、勝手にそんな妄想が、頭の中に浮かんできちゃって。
誇大妄想はですね、僕は、仕事がいっぱいできるので、所長賞がもらえるという誇大妄想があったんです。
それで(追跡妄想は)ですね、僕は、だいたい理由もないのに、(誰かが)あとからついて来るという妄想があったんですよ。
幻聴は、例えば頭の中に聞こえてくる。『ああじゃないかこうじゃないか』といろんな幻聴が聞こえてくるんですよ。勝手に頭の中でね。
加害妄想*はですね、あいつは、私の欠点ばっかり言うので、ぶん殴ってやるという妄想がついてきっちゃったので、そうですね。」
(* これは加害妄想ではなく、被害妄想に基づく加害衝動である。加害妄想とは「自分が人に迷惑や損害を与えている」という思い込みのこと)
「当時は症状がなかったもんですから、まったく普通に、一所懸命仕事をしていました。コンピュータのSEをやっていました。システムエンジニアですね。10年間やってきました。
定時が一応午前9時から午後5時だったんですけどもね、当時は高度経済成長時代だったものですから、毎日残業があって、徹夜もあったんですよね。で、日曜出勤もあったんですよ。過労、疲労等が結構残っていたものですから、たぶんそれの影響で病気になったと思いますよね、働きすぎて。ほんとにね。」
「ある日突然なんか変な症状が出ちゃったものですから、会社の上司が、(病院に)ちょっと行ってみようかということになっちゃったものでね。ちょっと様子がおかしいから、そこで上司と一緒に行きました。そしたら、即入院でした。
僕、精神科(を受診)ということを知らされていなかったものですから、急にびっくりしちゃったんですよ、なんかね。前もって、精神科なら精神科と知っていれば良かったんですけど、急に精神科の医者だなんて言われちゃったものですから、ちょっと戸惑いました、正直言ってね。
措置入院でしたね。やっぱり上司の言うままにしてきました。入院したほうがいいんじゃないかって上司も言ってくれたのでね。しょっちゅうこんな妄想とかあったもので、ぐるぐるしちゃって、ま、入院もしょうがないと思っていました。最初は、有給休暇がちょっと残っていたものですから、使っていたんですけどね、使いきっちゃったので、長期休暇という格好を取らせていただいて、ずっと会社を休んで入院とかしていました。あの時は。」
措置入院:すぐに入院させなければ、精神障害のために自身を傷つけ、または他人を害するおそれがあると精神保健指定医2名が判断した場合、都道府県知事または政令指定都市市長の命令により、入院させることができる制度。精神保健福祉法によって定められた。措置入院ができる病院は、「国立病院」、「都道府県立病院」または「指定病院」である必要がある。