がんと向き合う

大腸がん 小腸がん 肺がん 膵臓がん 乳がん 子宮頸がん 卵巣がん 緩和ケア +plus イベント おしらせ
堀口 博 さん
(ほりぐち・ひろし)
chart
1933年神田生まれ。洋食屋店主。1997年に区民検診で血便が見つかり、近くの病院で大腸内視鏡検査を受けたところ、大腸がんが見つかる。近所の大学病院を紹介され同年5月末にS状結腸切除術(+リンパ節郭清)を受ける。退院した翌日から厨房に立つ。病院に指導された食事療法を守り、無理をしない生活を心がけている。
movieImage
1受診のきっかけ

「私はわりあい病気に対して疎いものですから。区民検診で2度ばかり血便が出て、(おかみさんに)『痔じゃないの?』と言われて、強引に痔の先生に診てもらうと、『痔もあるよ』と言うので、痔の手当てをしていました。次に検便をするとまた血便が出ていて、『おかしいんじゃないの?精密検査したら?』と言われたのですけど、痩せていくわけではないし、体重も85kgあり身長が1m68cmでお腹がかなり膨らんでいましたが、お通じはありました。母親が胃がんで激やせしたので、それに比べたら私は何でもないから、単なる痔だなと思っていました。

次の検便でやはり血便が出るので、『いやいや、そんなことはないよ』と夜トイレに行くと、下血したのです。男ですからびっくりして慌てて流してしまいました。そうしたらおかみさんに『それはもう絶対に見せてくれなきゃだめだ』と怒られました。『でもきれいな血だったよ』と言ったのです。『それはわからないから』というので明くる日、いつもかかる病院に行きました。

非常にいい外科の先生がおいでになり、その先生に言うと、『それはもう、すぐに検査してくれ』と言うので、大腸内視鏡検査をしました。内視鏡というのはかなり奥まで入れるものだと思っていたのですが、ものの2〜3分で終わってしまったのです。『堀口さん、これ以上いかないよ』と言われました。『どうして?』と言うと、『見てごらん』とモニターを見せられました。『これはどうしたのですか?』と言うと、『周りは全部がん細胞で、真ん中に小さい穴があいているのが、お通じが出るところです。これは(まるで)糸電話です』と説明してくれました。真ん中に本当に細くしか通じていないのです。『でも、お通じはあったのですよ』と言うと、『それは若いから力があるので腸を押し出されて出てきている』と言われたのです。でも『もう立派ながんだから、即、入院しなければいけない。ひとりで来たのですか?』と言うので、『自分のことなので自分で聞きに来ました』、『では完全に告知するけど、がんだから』と言われたときは、『ああ、やっぱりそうだったか』と思いました。私は母親とそっくりで母親の系統なので、『やっぱり(がんが)出たかな』と思いました。」

●黒い便

「本当に奈良の鹿の糞みたいにプツン、プツンと切れるのです。その次に細めの糞が4〜5センチぐらい続いて、またプツン、プツン、プツン、プツンとなります。そういう便が僕は出たのです。それは半月ぐらい続いていました。便は必ず見るのです。それがいつ行っても真っ黒なのがコロッコロッと出てくる。『あー、ずいぶん変わったものだな』と思っていました。」

●下腹部の痛み

「だけど下っ腹が痛いことは確かでしたね。ちょうど付け根のところが、手術する(S状結腸の)少し手前の部分、(お腹の)左側のほうがチクチクチクとするときがあるのです。押さえると、ものの3分ぐらいして(その痛みが)消えました。だから『つったのかな?』と思っていたのです。考えたらそこだったのですよね。だから、やはり徴候というのはいろいろな形で出てくることは確かですよね。もう2年ぐらいそうでした。それで(医者が言うには)『これ(がん)はすぐにできたものではなくて、3〜4年かかっている』と言うのです。」

●なった者にしかわからない恐怖

「がんを宣告されて『あぁ・・・やっぱりなったか』と思い、家に帰ってきたときは『がんだってよ。やっぱりダメだったよ』という程度に話しました。

本当のことを言うと、その夜は眠れなかったです。入院して手術するまでの間はどうなるかと思いました。あんなにすごいもの(モニターに映し出されたがん)を見せられて、これが治るものかなという気がありました。それまで、がんは怖いというイメージがありましたから。おふくろががんで死んでいるせいもあり、がんは不治の病だと思っていました。なので、あぁ怖いなぁ・・・と思ったのです。

皆は『がんで大腸がんぐらい軽い病気はないんだよ』と言うのですが、その恐怖はなった人にならないとわかりません。だって事実、死んでいるじゃない。ですからそういう話と事実と食い違いが出ると余計落ち込むのです。『大丈夫だよ』と言われたけど、やっぱり手術しなきゃだめなのかと思うと、そのギャップがすごく怖かったです。」