「薬に頼りすぎると思うのね、治療が。通院すると薬、薬の量、種類をどうしましょうかってね。こんなに飲まなきゃいけないのってね。『これ先生、何か月間ですか』というと『一生だよ』とか言われると、もうそれで絶望ですよね。肝臓悪くなるんじゃない?って。僕は絶対副作用ってたくさんあると思うのに、医者は副作用はあんまり言わないのね。副作用を言うと飲まなくなるでしょ。それは、僕らはとってもよく分かります。医者の立場も分かる。でもねえ、薬をそんなに飲ませるのはどうして?と、私は思ってしまうのね。なんか本人が調子悪いんですって訴えると、『じゃ、これをちょっと足しましょう』と、また別の訴えで夜、眠れないんですというと、『じゃこれ足しましょう』と。訴えれば訴えるほど薬が増えていくのね、それっておかしいですよね。
だから薬になるべく頼らないでね、先進国でやられている認知行動療法とか、いろんな精神療法とか心理的な支え、カウンセリングとか、薬を使わないで本人の心を支えて本人の心の中にある自分自身の偏見を取り除けるような支援をもらえたり…。自己否定も強いですよね、『死んでしまえ』って幻聴で聞こえるのは、たぶんどこかでそう思ってるんですね。自分みたいなものは死んでしまえばいいんだと。それはやっぱり自分の穏やかな気持ちを肯定できていない。自分を自分で受け入れて肯定できるような心理的な支援、カウンセリングとかがやっぱりあってしかるべきだと思うのね。」
「医療、病院というものの存在がね、これから大いにその機能とか性質が変わっていかなければいけないんですよ。それと薬偏重で行われている、しかもくるのを待っている、ということはあってはいけない制度だと思う。やはり心の支えを病院できちんと取り入れて、場合によってはカウンセリングだけだっていいじゃありませんか。薬はほんのわずかでね、そういう病院に変わっていかなきゃいけない。
それからくることができないところには出かけていく病院でなければいけない。それから病院というイメージもときどき取り下げたいよね。休養する場所、気持ちのいいホテル?のびのびと静養できて、場合によっては趣味だってできるような、おしゃべりも楽しくできるような、そういう明るい町の中のホーム的な、非常にあったかいような居場所にならなければいけないと思いますね。治療というものが前面に出るよりも、居場所というような雰囲気を与えて、そこで1か月2か月過ごしてすぐに退院してくるという。在院期間(入院期間)をなるべく短くしてね。
入院というのは、今すごく嫌がりますよ、みなさん。なぜかというと鉄格子だし、保護室だし、しかも自分が最悪になったときにしか行かないわけでしょ。だから軽い間にさっと休養できて、良くなったらさっと出てこられるような出入りの自由な場所。ショートステイと、今、言っていますけど、僕、ショートステイが病院で良いんじゃないかと思うんです[*2]。それで治療する場所は監禁する場所じゃなくって[*3]、しばらくそこで憩える場所、心がもっと安定を取り戻してね、楽になったら出てきて幸せにまた生活を続けていける。そういう出入りの自由な、本当の意味での人間を大切にした治療というか、人間全体を大切にしてくれる場所の中に治療があるような場所が、僕は病院だと思うんですよね。それをやっていただけると、これからみんな精神病院、精神科の病院という、かつてあった暗いイメージではなくて、誰でもが心が疲れたときにふっと行ってね、そして心が安定して保たれるというような、そういう拠点の1つになれば、私、良いかと思うんです。」
[注]
*2:休息目的の短期入院は、病院でも行われています。
*3:病棟には病状に応じて閉鎖病棟と開放病棟があります。
「精神科の患者さんと特別視しないで、一般市民誰でも必要なお薬をもらえたり、体と精神の合併症であれば両方とも丁寧にちゃんと治療が受けられたり、今のように精神科の病気の人はお断りという一般の診療科がある病院がいっぱいあるんですけどね。それはやっぱりなくさなくちゃいけないと思う。
救急患者さんの中には、精神科の患者さんだって突然心臓麻痺が起きそうになったり、いろんな急性症状が起きることがいっぱいあるんですから、その人達がすぐにも対応してもらわなければいけないのに、現実にはすごい時間がかかってからかつぎこまれるんですよ。(救急車で)6時間もかかったっていう話がありますからね。だからそれは絶対あってはいけない。なんでそうなってきたかというと、重くなってしまってどうしようもない精神科の患者さんばかりを病院が扱ってきて、みんなもそういう目でしか知らないから。精神科というのは、もっと早いうちに対応すればそんなことにならないで、もっともっと軽いうちにすむんだということをみんなが知っていればね、『じゃうちの病院空いてるからどうする』とかね。だって軽い患者だったらいいわけですから。指示には従うしね、精神科の薬は処方箋に書いてそれさえ出しておけば普通の人と何も変わらないという患者さんの姿を保っておけば、今のように拒否されることはないと思うんですよね。精神科だけ。」
「1人1人の先生についてありますね。これは、人間なんだよということをまず前面に出していらっしゃる先生ね。僕もあなたも人間同士、患者さんと家族ともね、人間同士のおつき合いですよと、僕もいろいろな弱みはたくさんありますけど、なんとかしている、あなたもそうですねと。で、薬というものを僕は出すけれども薬だけで全部が治るわけではないということを分かっている先生ね。で、薬の他にもいろんな支えが絶対必要だということを分かっている先生。それは、その人を取り巻く人間の心、感情の世界、あるいは精神的環境、感情の環境というか、人間的環境というか…。周りを取り巻く人たちからその人がどういう接し方をされているか、取扱いというかつき合い方をされているかということまで心配してくださる先生ね。」
「それから精神的な支え、周りの人間達の支え、それは家族とどのように触れあってくださるかということも先生の判断の基準ですね、最初に受診したときの、ね。むしろ家族は患者さんの敵で、まったく相手にしない先生もいるわけ。家族と会っていることが分かると患者さんが敵対視を医者にもするから、まるっきり(家族と)会わない、電話も受けつけない先生もいらっしゃるんですよ。いろんな診療の仕方、治療の仕方があってね。だから家族を大事にして、家族を見方につけてくださっている先生を、やっぱり僕は良い先生だと思いますね。
それから地域社会でのその人の役割とか居場所ね、これによっても病状が大きく左右されることを知っている先生ね。病院と家だけじゃなくてね。患者さんが安定不安定という、いろんな出来事、職場での出来事あるいは職場がないかどうか、あるいは周りに話し合える仲間がいないかどうか、日常ね、孤立しているのか気楽に話し合える場所があるのか、そのことも把握しながら仕事を進めながら社会のありかた、医療のありかたにも関心をもって一生懸命取り組んでいらっしゃる先生を良い先生だと思いますよね。」
「家族会の中でいろんな評判が出るのね。裏の評判がね。だから家族会は不思議なことにそういう評判による情報をつかんでいますよ。いろんなところの病院にさんざんかかったから、もうウインドショッピングみたいに回る人もいるしね。そういうのにとっても詳しい家族会もありますね。だから、まあ家族会によって能力も違いますけど、いろんな経験をしている人たちが家族会にきているから分かりますね。
それから講演会に出ると講演してくださる先生の話聞いててね、『この人は そういうふうな先生なんだ』とかね。
それからね、保健師さんとか病院のワーカーさんの中にはとてもいろいろ情報を分かっている方がいらっしゃってね。自分なりに考え方をもっていらして、それはまさに心理社会的な支援も欠かせないものなんだということもよく分かっていらっしゃる。そういう観点から先生をいろいろ見ていらっしゃってね、噂も聞いている保健師さんの中には、優れた方がたくさんいらっしゃいます。それからワーカーさんもね。地域にたくさん足を運んでいろんなケースに触れているから、地域の中で患者さんがどう扱っていられるかも知っておられるから、上手なお医者さんあまり上手でないお医者さんをよく分かると思うのね。この方にはこのお医者さんがいいなあっていうふうなことまで配慮してくださる保健師さんっているんですよ。本当に。多摩地域で言えば保健所。昔はたくさんあったんだけども、今減っていますからね 残念なんですけどね。あるいは市役所にもいますよね保健師さん。そういう方で、熱心な方はそういう情報を分かっていますね。
あと病院も患者さんの話を聞くとだいたい分かってきますよね。どこどこのお医者さんはすごく入れ替わりが激しいとかね、どこどこの病院はとってもセカンドオピニオン大歓迎と言っているとかね。だから入院した経験のある患者さんに病院の話を聞けば、病院もいろいろとある一面が分かりますね。分かんない面もあるけどね。同じ病院なのに良い病院悪い病院って2つに分かれますからね、見方も、いろいろです。」