「中学1年生の時に強迫観念がつきまして、考えを消そう消そうとしてもまた同じ考えが浮かんできまして。そのあと強迫性障害の特徴で、強迫行為ですね、電気をつけたり消したり、鍵をガチャガチャ開けたり閉めたり、手を洗ってしまっているとか、今もそれはまったく消えていないのですけど。そのあと、統合失調症的な症状が出てきまして。支離滅裂な思考とか行動とか、コミュニケーション障害的なものとか。でも統合失調症的な症状はあまり多くなくて、一番大きいのはやはり強迫性障害です。
小説みたいなのですけど、親から少し虐待を受けていまして。そのあと学校でもやはりいじめられて、中学から通えない状態だったのですが、なんとか気力で乗り越えまして。で、高校に行こうとした時に先生に、『自分はこの状態じゃ高校行けないから、就職します』と訴えたのですが、『甘えてる』と言われて、障害を全然理解してもらえなかったのですね。学校ってメンタルヘルスリテラシーとかが全然なくて、障害を持っている方にはすごく酷な状況です。今の時代だったら、特別支援学級とかあるのですが、僕の時はなくて。健常者も障害者も全部同じところに集められて、その中では、障害者がはじき飛ばされてしまう状態で……、それが僕だったのですが。
やはりクラスメイトの中にはそういう障害を持っていると理解している方がいて、時々、助けてくれたのですけど、僕は突っ張っていたので、跳ね返したりして。で、高校に行ったのですが、またいじめられて。で、とうとう、その時、強迫性障害がひどくなりまして、『もう高校に通えない』と思いまして。反抗したというか突っ張ってしまうのですよね。それが出まして、高校の体育の先生とケンカをしまして、中退になってしまったのです。で、そのあと、引きこもったり、家を飛び出して放浪したり、そして自殺未遂を繰り返したり、あとはホームレスもやってみたり……。
でも『仕事しなくちゃ』と思ったのです。小説家になるとか一人でできる仕事を探していたのです、ミュージシャンになるとか。でもやはりそれでは食べていけなくて。で、そのあと、父の実家の山奥に飛び込んでしまいまして、そこでサバイバル生活を送りまして、山菜を食べたり川で体を洗ったり。とにかく暇だったのですけど、そんな生活を約9か月間続けたのですね。
そしたら、『東京から来た若い人、16歳の子が山奥に誰か住んでる』と話題、噂になって、近所の村民が、連絡、通報したらしくて。で、ケースワーカーさんが来て、『この人おかしい』となりまして、そのあと、先生(医師)と一緒に来て。その時、父親も同伴してきて、『やっぱり病気ですかね』という話になって。で、パニックになりまして、『病院に入院させるのか』と。それで追い返すようにして『出ていってくれ』となったのですけど。
その後、親戚が、田舎、(山奥の)近くにいるのですけど、ちょっとした用事で、夜中に間違えて電話をかけてしまったのですね。そして冗談で、『ごめんなさい、こんなに遅い時間にかけて。もう病院に入ったほうがいいですねぇ、ハハハぁ』と言ったら、田舎の人って純粋なのですね、その通りに受け取ってしまって。で、うちの家族に連絡して、父親が来て、『買物行こう』と言われて(車に)乗って行ったのです。そしたらそこが精神科病院で、『騙(だま)したな』とパニックになって、父親をバーンと殴って。で、僕、車から出なくて、遠くで父親が『真五、真五!』と大声で言っていて、精神科医が車に乗り込んで来て、辛かったのですけど、母親が遠くで謝っていて。で、(車の)鍵を開けろと強制的に引っ張り出されて、病院に連れ込まれて鎮静剤を打たれて。だからなんかパニックになって……。
で、病棟へ入れられて。そこは閉鎖病棟で、『なんだここ、俺、どうなるんだ』と思って、そして病室に入れられて。食事を与えられたのですけど食べられなくて。で、遠くを見て、窓を見たら、鉄格子が付いていたのですね。『え、これ、ドラマで見たのと一緒じゃん!』と思って。それから薬を飲まされたのですが、副作用が強くて便秘になったり、アカシジアという、今もあるのですけど、足がむずむずしたり、とにかく制止不能で。錐体外路(すいたいがいろ)症状というのがあるのですけど、常に体がむずむずして。ここの患者さんは、そういう知識もなかったし、僕もなかったので、周りに理解してもらえなくて、うっとうしいとか、落ち着かんなぁとか言われて殴られたり蹴られたりして。(それは)患者さんからです。
で、精神科医に頼んだら、分かったと言われて筋肉注射を打たれて、すごく痛かったのですけど、そうしたら治ったのですね。副作用を取るために、また副作用のある薬を打つというイタチごっこなのです。さらに、16歳で成長期なのに、僕、小柄なのですけど、そういう日々が続きまして。もう、常に薬も変わっていったのですけど、やはり副作用が出て、眠れなかったり。あと睡眠薬も出されたのですけど、睡眠薬を飲むと、正常な睡眠とかとは違って、ノックアウトされるような睡眠なので、やはり起きられなかったり……。やはり異常な睡眠だったと思います。」
「(入院は)1回です。(入院期間は)1年半です。その間に、本当に毎日単調な生活で、お風呂に入ってご飯を食べて作業をやっての繰り返しで。16歳って青春時代で、恋愛とか勉強とかスポーツとかでキラキラしている時期なのに、僕は鉄格子の付いた窓を遠くに見ながら泣いていたり、毎晩、『なんでこんなことになったんだ』と泣いていたりして……。
ただそこに、小さないい想い出があるのですけど。女子病棟の患者さんがいて、いろんなお話をして、お互い『辛い、辛い』と言っていて。歳は聞かなかったのですけど同じぐらいで、いろんなプレゼント交換とかをして。そこはいい想い出だったのですけど。その女性患者さんが退院する時、『好きだったんだけどな』と言われて。でもその時パニックになって、『そんなこと言われても』と思ったのですけど……。そこは入院中唯一いい想い出でした。」
「16歳。病院の院長だったのですけど、先生から言われました。
『これドッキリだろ』とか、『ウソだ』と思っていて。でもまさか自分の人生で病院に入れられるとか思わなくて、まさか……。僕、昔からバカにしているところがあったのです、障害を持っている方とかに。小学生までは、まずまず健康だったので、身体障害者の方とか知的障害者の方とか、精神障害者の方を、今までバカにして指をさしたりしていたのですね。まさかそれが、僕が対象になるとは思わなくて、現実を受け入れられなくて……、とにかく病院で目をつぶって寝ている、現実逃避という日々が続いていました。」