「（退院時は）18歳でした。まったく変わらないどころかひどくなっていて。相変わらず副作用にも苦しめられて、入院する前のほうがよほど体調は良かったです。

そのあとは、精神障害者の生活訓練施設というところに入所しまして、そこでもやはり病院とまったく変わらない生活で。授産施設が併設されていまして、そこでおしぼりのリースというか、レンタル業をやっていまして。そこを往復して、食べて寝て、お風呂に入っての往復という感じで、まったく生きがいもなく、光もなく、ただなんとなくボーッと暮らして。『ま、どうでもいいや』という生活がまた1年半続きました。

その後東京に戻されまして。入所期間が1年半と決まっていたのですね。その中でやはり、その生活訓練施設の思い出と言ったら、無いですね。やはり病院と同じで、空白の期間というか。お別れの日にお別れ会があって、ギターを弾いて歌ったぐらいしか想い出がなくて、ただボーッと暮らしていて。普通、18歳から20歳までというのは、高校・大学の時期なのに、僕はただ時間を潰していて、病院でも施設でも、日めくりカレンダーがちぎれていくのをただボーッと眺めていたという感じです。

田舎なので、電車があまり通っていなくて。最初、（僕は）東京出身なのですけど、時間がよく分からなくて遅れてしまったりして、ご迷惑をかけてしまったりしたのですけど。でもなんと言うか……、今でも思い出すのは、さびれた駅、無人駅と、淋しすぎな踏切と、いつも通った道と、電車の中はガラガラ（空き）で、そういう想い出しかないです。」

精神障害者授産施設：雇用されることが困難な精神障害者を対象に、自活生活を支援するため、低料金で必要な訓練を行い職を提供して社会復帰を図ることを目的とした施設。施設には通所型と入所型があり、通所型は定員が20名以上、入所型は同じ20〜30名以下とされている。利用者には授産活動に応じて工賃が支払われる。精神保健福祉法に基づく精神障害者社会復帰施設の一つ。

「二十歳の中頃になっていまして、その後どうするかと、保健師さんとかとお話をしましたところ、作業所に入所しまして、そこでは2年半だったのですけど。その頃、視力が急激に落ちまして、目が見えなくなってしまったのです。今は、強迫性障害があるのでメガネを掛けられなくて。ズレとか曇りとかが気になってしまうのです。放っておいたらさらに（視力が）落ちて。で、（作業所に）通っていたのですけど、だんだん通えなくなりまして。外にも出られない、作業所にも行けない。その後、30歳まで引きこもってしまいました。

ただ、何もしなくて、図書館に通って、母親と買い物して、そんな風に暮らしていました。作業所の想い出は、やはり生活訓練施設とか病院とかと変わらなくて、ボーッとただ流されて、生きる生きがいもなく生きてしまって、ロボットのように暮らしていて、感情が消えていて、思考がストップしている感じでした。

実家の近くの病院に通っていまして、（今も）10数年通っています。先生は、3人変わったのですけど。最初の先生は、この人とはやっていけないと思いまして、医者を変えたのです。次の先生は優しかったのですけど、僕が『人生とはこういうものかな、ああいうものかな』というお話をすると、先生に『そういうの分かんないから』と言われて、次第にちょっと疎遠になって、心が疎遠になっていって。で、その先生がまた異動になりまして。次の先生は、僕は文章を書くのですけど、『賞を取りました』と渡したら、これ（賞）はインチキだと言ってきたり、僕が資格を取ったりしても、その資格もウソだと言われたり……。今もその先生なのですけど。『面従腹背（めんじゅうふくはい）』という言葉があるのですけど、顔は従っていて、腹は逆らっているという感じで、なんて言うか僕が先生に合わせている感じです。

2週間に1回通っています。でも、病院へ行く日になるとなんか鬱（うつ）になって……。」