統合失調症と向き合う

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渡辺真五さん
渡辺真五さん
(わたなべ しんご)
1982年生まれの33歳(収録時)。中学1年生の時に強迫性障害、その後統合失調症の症状が出て、16歳の時に診断される。一度の入院経験がある。現在は、高校卒業と大学入学を目指して勉学中。ケースワーカーになるという目標ができた。症状はまだ不安定だが、そのような状況でも毎日を過ごしている当事者の実際を知ってほしいとインタビューに協力。ギターを弾くことが好きで、時々、演奏している映像をYouTubeに掲載している。
渡辺さんのブログ「人生のブログ 統合失調症患者のアールブリュットhttp://shingo1621.blog.fc2.com/
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4現在服用している薬と症状
Q.現在飲んでいる薬を教えてください

「以前とほぼ変わっていないのですが、リスパダールタスモリンです。リスパダールは体重が増加したりアカシジアが出たり、それはまあ、錐体外路症状ですよね。あとはよだれが止まらなくなったり便秘になったり。タスモリンは、パーキンソンニズムというのですけど、手が震えたり、そういう症状が出て……、薬を飲まないほうが幸せなような気がします。(薬を)飲まないと症状が出て、飲めば症状も出て、ずっと苦しいですね。

最初の病院の先生からは、お薬はまったく知らされていなくて、どういう副作用かも、どういう障害かとかも教えてくれなくて、病名もどういう薬かもまったく教えてくれない状態でした。

(今は、睡眠導入薬は)無いです。でも、睡眠導入薬を飲むと、さらに苦しい思いをするのです。それで眠れるように、運動をしたり、朝起きて太陽を見たり。あとは、そうですね、このように外に出たり……。やはり引きこもると眠れなくなってしまうので、なるべく外に出ようとして。あと豆乳を飲んだり、玉子とか魚とかトリプトファンが入っている食べ物を食べたりしてしのいでいます。」

リスパダール(リスペリドン):非定型抗精神病薬
タスモリン(ビペリデン):抗パーキンソン病薬
トリプトファン:快眠につながると言われる代表的な栄養素。体づくりや1日の活動に不可欠な必須アミノ酸の一つで、睡眠に深く関係性があると言われるセロトニン、メラトニンといった物質を作ることで知られている。

Q.現在、症状は改善しましたか

「まだひどくて。もちろん16歳の時よりはましなのですけど、薬で変わったという印象はなくて……、自分自身の心の成長だと思います。

まだ便秘とか不眠とか、薬を飲むと肌が荒れたり、あと、なんだろ、夜中に足がむずむずして起こされたり、よだれが止まらなくなったりとか。

今、あるんですね。必死に今、こらえていて、だから話しながら苦しくて。消えるとまた出てきて。副作用もそうなのです。やっと副作用が消えたかと思うと、また違うのが出てきて……。強迫性障害もそうなのです。こうやってお話をしていても声が聞こえてくるし。なんか、もうバカだとかうるさいとかいろいろ聞こえてくるのです。だからお話をしながら同時に聞こえてくるので、ステレオ放送なのですね。だから聞きとれない時もあって。

たしか3つの苦しみを味わっていて、ここにいるのですね。でもなのですけど、16(歳)、発病したのは13(歳)ですけど、33歳、20年間ずっとそうなのでもう慣れてしまって。生き地獄なのですけど、地獄でも先ほどお話ししたように生きていたいし。それでは何で生きていたいの?と言われるとそれが分からないのですけど。ただ、好きな言葉があるのですけど。島崎藤村にこんな言葉があるのですね。『生きたくないと思ったって、生きるだけは生きなきゃならないよ』という言葉があって。死にたいと思ったって生きるしかないなら生きるし、生きていればいいと思って、ここにやってきました。ただ、一つ思うのは、これは、いつも思っているのですけど、『もうすぐ死ねる』と思いながら生きています。いつか、いつか死ねる、もうすぐ死ねる。そう考えるとその苦しみからも解放される日が来ると考えて生きています。」

Q.病気や治療について調べたりしましたか

「先ほど10年間引きこもっているとお伝えしたのですが、その間、何もしていないのではなくて、図書館にずうっと通っていたのです。で、図書館の本を全部読みまして、もう、漢和辞典とか広辞苑を全部暗記してしまって。僕は理系がまったくだめで文化系が得意で、それで賞を取ったりしたのですけど。」

Q.症状が悪化しないように気をつけていることはありますか

「結構幸せかもしれなくて。ま、楽観主義というのもあるのですけど、悲観を楽観しているというか……。結局、『まあ、なるようになるか』で生きているので、もしかしたら、今見えている世界が別な世界かもしれないし、考えていることも別のことかもしれないし。結局、幸も不幸も人間の思考にしか過ぎないのですよね。

すべてを疑ってしまうのです。で、疑い切る(疑いを徹底する)と、もう、なんでもいいやとなってしまうし、意外と自分で今苦しんでいるのも苦しんでいないかもしれないし。もっともっと考えれば、僕、生まれていないかもしれないし、もう死んで終わっているのかもしれないし、この世がないのかもしれないし……と考えると、スタートも終わりもなくて、そこにあるのは何もないかもしれない。精神障害者とか言うけど、まあ、それもないかもしれないし。だからつまるところはなんでしょう、まあ、『なるようになる、心配するな』というのが、生きるモットーなのですけど。そんなところかもしれません。」

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