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小川 清子さん
小川 清子さん
(おがわ・きよこ)
1955年生まれ。島根県益田市在住。2007年に肺がんと診断され病院を転々としたのち、専門病院での抗がん剤治療が奏効し、現在は自宅で療養中。喫煙歴なし。夫と息子、娘2人の5人家族、現在は夫と2人暮らし。1998年に益田駅近くに一軒家を借りて、子供からお年寄りまで地域の人の交流の場としてNPO法人息域(いきいき)スペース ポコ・ア・ポコを開設、現在はがん患者のためのサロンも月に2回開いている。
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7近くに専門病院がないという現実

「私の場合は、『肺(の専門医がいる病院)だったらこことここ』と病院で言われて、少しでも近い所でいうことで、こちら(山口県の専門病院)のほうをとったのですが、皆さん東京のほうに行かれたり、四国や九州のほうに行かれる人もいらっしゃると思うのです。なかなかそれはお金がかかることですし、それぞれ家庭の事情というものもあるでしょうし。私は今まだ夫が元気なので運転してもらって病院に行けるけれども、歳をとるとなかなかそれも難しいでしょうしたいへんですね。そういう状態なのだな・・・というのは病気になって改めて思いました。

また地元を離れて、他県の病院に行くということは、少し調子がいいからと地元に帰ってきても、ここで孤立するわけですよね。そうなると病院の先生だけがこの病気を治すわけではなくて、やはり精神的な面でいろんな場や話したりする部分がどうしても抜け落ちてしまい、そのなかで精神的にもしんどくなるという状況が生まれるのではないかと思っています。」

サロンを作る

「『退院するのはいいけど、一人になるからね。病院もいやだけど、家に帰ってもひとりぼっちだから、それはそれで・・』というのを(入院しているときに)聞いていたのですね。山口のほうでもそうだったら、益田でもそうなのだろうと思いました。また『がんは、ばちが当たったから』という言い方しておられたけど、そんなものではないし、そういう(ひとりぼっちになる)人が少しでもいなくなり、皆で今日一日笑顔で過ごせる場があれば、元気になれるのではないかと思い、サロンを作ろうと思いました。

そう思って動き出したら、いろんなサロン行ってみたいと思ってそこに行く、そこに行けばまた出会いがある、そこで楽しそうに便りを書いている人おられたら、『私もちょっと便りを書いてみようかな』と思い、思いがけぬ人からまた思いがけぬ言葉や出会いをいただく。だから『捨てたもんじゃないな・・・』と思います。そう言いながら、私も本当にもう何日後はわからない、病院とか入院とか死も含めてだけど、そういう状況にあるので、サロンを続けるのは正直どうかなあというのはすごく思っているのです。夢を語れば語るほど、『ああ私はそこまでできないんじゃないか』と思ったりするのです。でも『結果ではなくて、どう向き合ってきたか、何に向かってやってきたかが大事』だといつか何かの文章で読んだので、いいのかなと思ったりもします。」

孤独にならないこと

「体調の波でやはりいろいろ揺れ動くのですね。そのなかでも『孤独にならない』ということはとても大事かなと思います。癒されるという言い方はおかしいのですが、お医者さんだけで癒されるものではないので、人と出会ったり、同じような体験をもつ人たちと話し合うことも大事だと思うし、また自然からとか、動物からとか、やはり守られているんだ、孤独じゃないという気持ちをもちながら、なにか一緒にそういう場づくりができればいいなと思っています。病気のおかげで、今まで自分では気づかなかったけれど、無理していた部分を見直すきっかけになるかもわからないですし。『がんになっても豊かに生きていけるんだ』という場が、早期発見と同じくらいに大事な部分があるのではないかと思います。

そして今思うのは、生老病死ではないですが、生まれてきて老いたり病んだり死ぬというのは皆あることですので、この病(やまい)だけというのではなく、いろんな人が集まって交流できて、何か今日一日お互いが、『あぁ今日も生ききった』みたいな感じになれるような、(サロンが)そういう場にもなれたらいいなと思っています。」

(小川清子さんは2009年に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。)