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「アリピプラゾール（商品名：エビリファイ）は、日本で作られた薬で、これが今、世界中で広まっている薬です。日本の誇るべき薬だと思いますね。

表2　抗精神病薬による主な副作用 クリックで拡大します

この薬は、ある程度の幻覚妄想を治す力もきちんとあるし、錐体外路症状も比較的起こしづらいですし、何よりも優れているのは、代謝系の副作用が割合少ないというふうに言われています。ですから、ある意味で非常に使いやすい薬ではあるのですね。ただ、この薬だけでは、残念ながら急性の幻覚妄想状態とか、治る人もいるのですけれど、十分治らない人がいるのも事実ですね。あるいは、このアリピプラゾールに切り替えていく場合に、なかなかうまくいかないこともあるのですよね。この切り替え方に関しては、今、研究がずいぶんされてきて、結構たくさんの量を使ったほうがいいということも言われておりますけれども、それですべての方がうまくいくかどうかはよく分かりません。切り替えが割合難しい薬です。

ただ、一度アリピプラゾールで安定した方というのは、いろんな副作用の問題がない、とってもいい維持効果が得られます。併用薬をほとんど使わなくて、副作用止めなども使わなくて、きわめて良い維持治療ができるし、代謝性の副作用も、そんなに問題にならないこともあります。ですから、私は、アリピプラゾールは外来維持に非常に優れた薬だと思います。

今、アリピプラゾールのいわゆるデポ剤・持効性注射製剤が、世界中で臨床試験がなされているのですけども、日本でもこれが発売されてきたら、たいへん良い薬になるのではないかなと思います。」

「代謝性の問題が起きやすい方、あるいはそれが心配される方に、アリピプラゾールがよく使われるようになってきたというのは、最近の傾向ですね。だけれども、問題が全然ないわけではないのです。アリピプラゾールも抗精神病薬ですし、そういう問題が起こることがあります。アリピプラゾールによる糖尿病性の急性合併症というのも日本で報告されていて、医薬品機構（医薬品副作用被害救済研究振興調査機構）にもいくつも（報告）されている、世界的にも報告されていますから。

要するに抗精神病薬を使う場合というのは、やっぱり定期的に検査が必要なのは間違いないですから、アリピプラゾールは、そういうの（副作用）は、たしかにオランザピンなどよりはるかに少ないと思いますけれども、だからといってないわけではないので、やはりきちんとした定期的な検査をしながら使うべきであるということは間違いないと思います。

それからアリピプラゾールというのは、やはり患者さんによっては、アカシジアという副作用が起きやすいと思いますし、中には錐体外路症状が起こることもあります。最近、ある程度高年齢の方に抗精神病薬を使うことが結構多くなってきたのです。例えば、ご高齢の認知症の方とかも、いわゆるBPSD（BPSD：Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia）と言われている幻覚妄想があるような場合には、今（で）は、いろいろ気をつけながら使うのですが、そういう方に、例えばリスペリドンとか、アリピプラゾールとか、そういう薬を使っていく中で、やはり遅発性ジスキネジアの問題であるとかいろいろな副作用の問題というのは相変わらず存在しうるし、年齢が高い方に抗精神病薬を使うことは、やはり十分気をつけなければならないことですよね。」

BPSD：Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia認知症の行動・心理症状