統合失調症と向き合う

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藤井康男さん
藤井 康男さん
(ふじい・やすお)
山梨県立北病院院長、
慶応義塾大学医学部精神神経科客員教授
1977年慶応義塾大学医学部卒業。1978年4月 山梨県立北病院に勤務。1985年9月 医学博士を授与。1985年8月〜1年間 フランスのバッサンス公立病院へ留学。2003年4月山梨県立北病院院長に就任し、2007年4月より慶應義塾大学医学部精神神経科客員教授。
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4妊娠、出産と薬について
●妊娠について

「妊娠・出産の問題は非常に重大な問題ですけども、基本的に考えるのは、当たり前ですけども、妊娠・出産というのは人生の大イベントですから、それをどういう時にすべきか、ということに関しては、病気の方ではなくてもみなさんいろいろ考えながらするわけですけど、なかなか考える通りにはならないものですね。

だけど、やはりある程度は計画的にするなり、お医者さんと相談しながらすることが、とても重要でしょうね。それで、当然、妊娠・出産したら子どもを育てなければいけないわけですから、それだけの余力があると言いますか、自分でもそういうことを目指していって、ある程度環境的にも整っている状況で考えるべきかもしれません。

ただ、やはり結婚されて妊娠・出産されるというのはとても重要でして、ご本人の生きがいなり、家族というものを作るということは、その人の生きる力をそれだけ強めますよね。で、みなさん助け合って、ほんとに良い生活をされている方をたくさん、私も知っています。ただ、それに至るまではなかなかの努力が必要ですよね。そういうことも含めて、やはり治療環境的にお医者さんとの連携だとか、家族の協力だとか、そういうものを十分考えてやるべきことだろうなと思います。

もちろん妊娠・出産で、お薬の影響なども当然考えなければいけませんし、時期的な問題もあるかもしれませんし、薬の種類もあると思います。この辺に関しては、1つ1つの問題はその人それぞれの薬に関係しますので、一概に言えることではないのですけども、統合失調症の薬に関しては、妊娠していても薬を続けて、出産後も(服薬を)続けるというのが、統合失調症の診断が明らかであって、再発が明らかに予想されるような場合は基本だと思うのですけど、そういう場合にどの薬をどの程度の量を続けるかということは、やはりお医者さんとよく相談したほうがいいことだろうなと思いますね。」

●出産後について

「もちろん出産後の授乳の問題がありますね。特におっぱいがちゃんと出ているお母さんでしたら、赤ちゃんに、特に最初の初乳とか、何か月か飲ませたいと思うのですが、おっぱいの中にお薬がある程度出ることも事実ですから、そのことに関しては基本的には人工栄養でやることが原則とされていると思うのですが…、やはり飲んでいる薬の量とかいろんなことを勘案して、お医者さんと相談すべきことだろうなと思います。

それは精神科のお医者さんだけの問題じゃないですね。妊娠・出産というのは、やはり他の科の、特に妊娠中などには、産後もそうですけども、いろんな体の病気も一緒に起こってくるような場合もありますから、産婦人科も含めたいろんな科のお医者さんと相談しながらやらなければいけないことも多々ありますね。そういう体制を作っていったほうがよろしいのかなというふうに思います。 だから、結婚をしようというふうに思った時から、主治医の先生とよく相談して、できれば、例えば、女性が患者さんだった場合はご主人にも分かってもらって、計画的に進めるべきだろうなと思います。

ただ、主治医の先生も、すべてそういうことが分かっているということではない。なぜかと言うと、薬が、例えば一番問題なのは、奇形の問題などだと思うのですけども、それに関して、厳密な検討というのはできないのですよね。つまりそういうこと(検討)をやるためには厳密な臨床試験が必要だと思うのですが、妊娠・出産に絡んだ臨床試験というのは現実的にできないですから、本当のことはなかなか分かっていないということだと思うのですよね。だからその中で、ある程度の覚悟を決めて、自分では妊娠・出産したい、ちゃんと育児もしたいという中で相談して決断することかなというふうに思います。」

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