クリックで拡大します かつら・ぼうし展示会の お知らせ (福島県立医大病院内) |
「ひとつ思ったのは、私もそうだったのですが、やはり医療用のウィッグは結構高いのですよね。買うと7〜8万円はかかってしまう。それは家があるなしにかかわらず、これから復興していく、あるいは治療を受けて心を前向きにしていくというときに、すごく経済的に負担になっていくのではないかということがひとつ。
あと脱毛というのは、やはり孤独感をすごく味わうのです。私も経験したときに思ったのですが、自分ががんになったということを本当に再認識させられる瞬間で、抜けたときというのは、“私、本当にがんをやって抗がん剤を身体の中に入れたんだ”と実感する瞬間なのです。そのときの孤独感はものすごく大きいのですよね。なんとかそれをケアしたい、心のケアをしたいなということ。それには『ひとりじゃないよ』というメッセージを何か送りたいと思ったのです。そうするとケア帽子も、ウィッグも皆が使って、“私も同じ経験したのよ”という、物自体がそういうメッセージになっているのですね。それを届けることには意味があると思いました。
あと3つ目は、医療者の方もすごくたいへんだし、疲れているのではないかなと思ったのです。そういう方たちに何かその“私たち患者も応援していますよ”というメッセージを送りたいという思いもあって、その3つの思いから直接的には“ウィッグの支援”というかたちになりました。
実際、現地の相談支援センターの方や、ソーシャルワーカーの方からも、(ウィッグやケア帽子を通じて)『患者さんと今まで話せなかったことも話せるようになった』とか、『自分たちも喜んでいる患者さんの明るい笑顔を見て本当に癒されている』とか、患者さんの側からも『本当に助かった』とか、『避難所で髪の毛が抜けていくのが心配で、私の避難所暮らしは、髪の毛が抜けないのをどう抑えるかということでした』という話を聞くと、何か『気持ちがつながってひとつになれてよかった』ということを本当に実感しました。」
「患者会やいろんな活動あると思うのですが、その枠を超えてひとつの目的に向かって動くことってなかなかなかったのではないかなと思っています。患者会に入っていない方や、ひとりひとりの思いや、家族の思いをつなげる場所というのがなかったのですね。それをこの『ワンワールド、世界はひとつだよ』ということで、つなげられたらよいなと思っています。実際にそうなりつつあるので、それは本当に現地での医療従事者の方とか、送ってくださった皆さんひとりひとりに感謝したいと思っています。」
「こういう支援活動は直後はすごいのですが、何年かたつと忘れられてしまうというのが本当に多いと思っています。私は第1便を送ったあと海外に行ったのですが、海外がもうその状況になっていて、皆忘れちゃっているのです。日本で今どういう状況か、まずニュースで流れていないのがすごく衝撃でした。CNNを観ても何も流れていないのです。もう終わったことになっちゃっている。ぜんぜん終わっていないのですよね。これからやっていかなくてはいけないのに、『あ、これなんだ』と思いました。
ですから日本に帰ってきたときにやはり、この活動はこれからもずっと続けていきたいと思いました。がん患者というのはこれからもずっと生まれ続けるわけで、その方たちもやはり同じような思いを経験されると考えると、しばらく何年間かは続けていきたい。いちおう5年を目標にはしていますが、継続的にたとえば春夏、それから秋冬というシーズンに分けて公募を募って、これからもずっと継続していきたいなと考えています。それは対がん協会さんのほうとも話をしてお約束をいただけましたので、本当に感謝していますし、一緒にまた皆で歩んでいけたらよいなと思っています。」
「(支援の対象は)乳がんの方だけではなくて、子宮頸がんの方もいれば、肺がんの方もいてさまざまです。全がんで、部位の壁や差はないです。そういう動きは今までなかったのではないかと思うのです。なので、『患者ができることは何?』と考えたときの本当に新しいひとつの答えではあるのかなと思っています。
あとひとつ嬉しかったのは、円形脱毛症の方からもお問い合わせがあり、そういう方にもウィッグをお渡しできたというのは、病気の壁も超えることができたのかなと思っています。もう思いはひとつですね。“患者さんのために”というところで医療者の方、提供する方、皆さんとつながれたというのがすごくよかったと思っています。」