「東大病院のデイホスピタルは、1974年に開設されました。当時は、まだデイケアというのは日本に本当に数か所しかないような時代で、特に統合失調症の方は薬をたくさん飲んで長期入院しているのが当たり前で、その地域でなかなか生活できるというふうなことにはなっていなかった時代だったんですね。そういう中で、ご存知と思うんですけれども再発を繰り返していく病気で、なかなか社会生活がうまくできない病気なんですけれども、そういう人たちをなんとか地域で生活させたいという、まあ当時としてはすごい画期的な目標を持ってつくられたデイケアだったんですね。
まあ大学紛争なんかがあって病棟が封鎖されていて使えないという状況で、必要性もあってつくられたデイケアです。」
「基本的に大規模認可デイケアを取っているんですね。大規模デイケア認可の基準というのは、スタッフが4人でメンバーさん50人という基準があって、職種としてはお医者さんと看護師がいて、その他に作業療法士とか臨床心理士とか精神保健福祉士とかが入っていれば良いっていう基準になっているんですね。で、うちはもちろんそれを満たしていて、プログラムをたくさんやっています。就労支援に行ったりとかアウトリーチの仕事もたくさんやっていますので人数がとてもたいへんで、現在はお医者さんが3人なんですね。これはもちろん兼務ですね。あと看護師が2人です。それに臨床心理士が3人で、作業療法士が1人というふうな構成になっています。これも最初からそういうことではなくって、最初はもっと少なかったんですけれども、いろいろ実績を積んで、病院当局にいろいろ働きかけて少しずつ増やしていただいているという経過があります。
デイケアというのは、ほんとにさまざまなデイケアがあって、少なくともやれるようなところがあるのかもしれませんけれども、私はメンバーの人数が7,8人に対してコメディカルが1人というぐらいの基準が望ましいかなというふうに考えています。」
「ほとんどは統合失調症の方で、週4日通われてきて、だいたい1日30名ぐらいの方が通所しているようなデイケアなんですね。で、統合失調症の人が地域で生活するためにはデイケアでどういう役割を果たせば良いのかということをいろいろ議論する中で、やっぱり社会と同じような状況を病院の中のデイケアですけれども、そういうシステムをつくらないと、病院の中では良いけれども外に出たら具合が悪くなるということになるのでは意味がないということで、院内だけれどもできるだけ社会にあるような構造を持ち込みたいというような発想でつくられています。
それなので、役割とかお仕事とかがたくさんあって、人間関係も社会であるようないろんな人間関係があって、そういう中で、自分ができる仕事を果たしていく。で、いろんな人間関係の中で評価されたりとかうまくいかないこともいっぱいあって、うまくいかないときにはどうしたらいいのかなということを一緒に考えてそれを乗り越えていく。そうするとたぶん患者さんというのは、デイケアで見せる面と社会に出て見せる面とほんとに同じなんですよね。同じ様なところでやっぱりつまずきますし。そこで社会に出たときにどうなるかということをデイケアの中で再現して、そこでうまくいかないところを一緒に考えるということになると思いますので、メンバーが主役で、来ていっぱい友だちがいていろんなことを活動していてとっても明るく生き生きと、元気に生活しています。
医療スタッフとメンバーは、立場はもちろん違いますけれども、そこは割となんと言うのかな、対等な立場というかそういう関係をつくっているというふうに思っています。」
「東大のデイホスピタルは、原則東大病院の精神科に通院している方に限っているんですよね。よくネットを見たとかいろんなところから紹介されたりして、『あのう、行きたいんですけど』っていうお電話があるんですけれども、まずは主治医の先生に相談していただいて、その方がデイケアに通える状態かどうかをやっぱりきちんと先生のほうも判断されると思いますので、それでオーケーが出ましたら(東大)デイケアのほうにお電話をしていただいて、まずは見学をしていただくと良いと思うんですね。自分が通えるかどうか、通いたいところかどうかということを見てみないとわからないと思いますので見ていただいて、そこに通いたいということに気持ちが固まったら先生に紹介状を書いてもらって東大病院の精神科に転院するという形になるわけですよね。」