「統合失調症を始めとする精神疾患というのは、実は思春期から青春期の最初にかけて、一番発病しやすい時期にあります。今までは、精神科医療保健サービスの多くは、大人の患者さん向けのサービスがたくさんあったのですが、一方、若い方々が使いやすいサービスというのはそれほど多くなかったという現状があります。若い人たちがなかなかサービスにアクセスをしない、しにくいという状況の中で、治療の開始、支援の開始が非常に遅れてきたという問題があります。これは日本だけではなくて、世界中でそういう共通した問題が、これまでずっとありました。特に最近になり、若い方々に早く適切な支援ができれば、非常に良くなる、非常に回復して勉強されたりお仕事されたり、有意義な生活を送れるということが、いろいろな研究や実践で分かってきているものですから、そういう意味では若い人たちの支援体制を強化することが非常に重要であるということが分かってきて、世界中で今、実践しているという状況だと思います。日本でも、今、そういった取り組みをいくつかのところで試験的に開始しているという状況だと思います。」
「海外の取り組みも、今、非常に活発にこの領域で進められていますけれども、以前から進んでいたというわけではないんですね。日本も今、そうですし、他の国々でもそうだったんですけれども、成人の患者さんのサービスというのは、かなりの数あったわけですね。もう一方で、非常に不足はしているのですけれど、発達障害の方々を中心に子どもさんたちを診ていくような小児の精神医療サービスというのは、不足しているけどもあった。(しかし)小児と成人の間にある思春期ですとか、若い方々向けのサービスというものが非常に欠落していたことによって、大きく若者の可能性を奪ってしまっていたというのが、国際的に共通した課題として捉えられてきました。
そういう状況を変えなければいけないということで、1990年代の後半以降、ヨーロッパですとかアメリカ、オーストラリアなどで、一生懸命若者向けのサービスを手厚くしていこうということが、地域の実践レベルでも進められましたし、国の政策としても大きく推進されたという状況があります。それに比べますと、まだわが国における若者向けの精神医療、精神保健のサービスというものは、非常に不足していて、若者向けのサービスを拡充していく方向で強化していかないといけないだろうと思います。」
「病気に気づくことがなかなかできないということですね。それは、情報が非常に不足しているという事態が影響していると思います。他の国々では、中学校、高校で統合失調症を始めとする精神疾患の教育をしっかり行っているわけですね。しかしながら、まだ日本においては、そういった若者が一番罹りやすい病気についての教育というものがなされていない。そういう中で誤解や偏見ばかりを身につけてしまうと、自分や自分の家族がそういう事態に陥ったときに、なかなか動けなくなってしまうという状況があります。」