「将来どうなるのだろうかという恐れはありましたけれども、大きな病院でしたので、先生方の話であるとか、年に数回、保護者の集いがありまして、そちらでいろんな事例の、先に病気になったお子さんのいる家庭の話を聞くとか、そういうことができまして、家内も一緒に行ったりして、だんだん対応の仕方がつかめるようになってきたのですね。」
「そうですね。先が見えないというのは非常に不安ですので、この先ほんとうにどうなるのか、廃人になってしまうのかどうかということも思ったりもしたものですから、そうではないということが、医療の進歩が非常に大きなものがあるということで、安心というか、そんなに恐れなくてもいいんだとだんだん分かってきた。それは大きな心の支えになりましたね。」
「デイサービス(デイケア)のサークルだとかクラブなどがあるものですから、そこを選択する時に、どういうことを将来やりたいのかと聞かれて、将来の仕事を考えてどういう方面のことをやったほうが良いかという話をした時に、本人が、どういうもの(仕事)があるか分からないものですから、作家だとか文章を書く仕事ができればいいというような…。作家がどういうものかは細かくは分からないようだったのですけど、生活の支えができるようにやっていければいいというようなことは、本人が希望したと思うのですね。
本人が作家になりたいということで、作家になるための本を本屋さんで見つけて、それがほんとうに参考になるかどうかは分からないのですけど、こんな本があるというので、渡したのではないかと思うのですけど。
ほんとうに作家になれるとはなかなか思えないですけど、本人がやりたいということでしたら、なれなくてもやりがいを見つけていければ、生きていく上では良いのではないかなとは思っていたのです。」
「あまり焦らさないようにしないといけないと思っているのですね。度々入院したのですが、悩んだりすると、やっぱり具合が悪くなるというふうに見受けたので、あんまり難しいことを要求したり、分からないようなことを真面目に考えるところがあるものですから、真面目に考えすぎないようにということは気をつけたと思っているのですけれど。」
「弟に対しては、ほんとに手を掛けていないから、ちょっとかわいそうなのですけども。 弟のほうも兄がそういう状態であるということは分かっているので、いろいろこうしてほしいとか、いろんなものを買ってもらいたいとか買いたいとかというようなことを抑えているのではないかと思うのですね。
だから、ちゃんと面と向かって対応してやれていないというのは、やっぱりあると思うのですね、親としては。弟は正常ですから、手を掛けてやっていないというのはどうしてもありますので。長男のほうをまず1番にして、弟は2番目というふうになってしまっているので、ちょっとその面ではかわいそうだと思うのです。」