クリックで拡大します 図1 |
周りは正常な粘膜、真ん中が腺腫というポリープです。真ん中に少しへこみがありますが、全体には形が揃っていて、丸い形のポリープですので、ほとんどの部分は腺腫です。大きさが3mmであり、周りの粘膜とポリープの表面の粘膜が非常に似た状態になっていることから、われわれはこれを見た場合には、組織検査でもおそらく腺腫という判定がされるであろうと思われ、腺腫という判断をすることが多いです。
先生によって、『これとりましょうか』と患者さんに相談をしてとる場合もありますが、このように小さい場合には『また来年、見ましょう』と、経過をみる場合もあります。」
クリックで拡大します 図2 |
右側の写真は超音波内視鏡という特殊な内視鏡で撮影したもので、これは腸を輪切りの断面で見ることができる検査です。これで見ると、左の写真でまさに怪しいと思っていたこのへこんでいる部分で、粘膜下層までがんが広がっていることがわかります。のっぺりしたポリープですが、これは内視鏡ではとってはいけないポリープのひとつです。粘膜下層にがんが入ってくると、やはりリンパ節転移が起きてくる危険性があります。幸いこの方はリンパ節転移はなかったのですが、このような場合には内視鏡的治療ではなくて、手術による切除(腸切除+リンパ節郭清)を勧めます。ステージはI ですので、外科的にきちんと切除すれば100%近く治る治療ができるがんです。」
クリックで拡大します 図3 |
同じ病変を超音波内視鏡を使って見ると、粘膜下層にがんが及んでいることがはっきりとわかります(図5)。
図6はポリープの部分にインジゴカルミンという色素をかけたものです。ピンク色の病変の周辺からインジゴカルミンという青い色素をかけることによって、病変がはっきりと浮き出てきます。さらに真ん中のへこんでいる部分の状況が、少し明瞭に見えてきます。
図7はさらにピオクタニンという色素で染色したものです。少し深くへこんでいた潰瘍部分を拡大内視鏡で見たものですが、このように縞状の模様が非常に不規則に散らばっていることがわかります。これを見ると表面からでも、この病変が粘膜下層にまで及んだ大腸がんであることが診断できます。
それから色素をかけないNBI(狭帯域光観察)という方法も最近行われるようになってきました(図8)。照射する光の波長を変えることで表面の血管構造が浮き出て見えるようになり、その形からこの病変が粘膜下層にまで広がっている大腸がんであるということが診断できます。
このように内視鏡は非常に進歩していて、何も処理をしないで見る通常の方法から、超音波内視鏡、色素をかける方法、光の波長を変えて見る方法まで、より詳細に病変の性状や深さを判断できるようになってきています。」