がんと向き合う

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5治療方針を決めるための検査

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表1
「実際に、がんと診断されて手術が必要だという場合に、安全に手術ができるかどうか、病気が大腸だけに限局しているのかどうか、他に転移がないのかどうかを調べる検査が必要になります(表1)。それに合わせて、どういう手術をするか、あるいは化学療法など他の治療をするべきなのかを調べる必要があります。

まず流れをお話しますと、手術をするにあたって、体が耐えられないと困ります。たとえば他に病気をもっていないか、大腸がんによる貧血がないかどうか、ということが大きな問題になります。他に心臓や肺に病気がないか、糖尿病がないかなどを血液生化学検査、心電図、胸部レントゲン等で調べます。もし糖尿病があれば血糖コントロールをしてから手術に臨みますし、心臓や肺に問題があれば、手術前後を通じてどういう対処をすべきかを知るために、心電図やレントゲンでの検査が必要になるわけです。

大腸に関して検査が不十分な場合、たとえばがんが直腸のどこにあって、肛門を残せるのか残せないのかは、肛門指診をして指で触って、ある程度確かめます。また、画像上でどの辺の位置にあるか、肛門の締まる筋肉からどのぐらいの距離があるか、実際の場所はどこかというようなことを調べるために、注腸造影検査をします。内視鏡検査での診断がまだ不十分だった場合には、もう一度、大腸内視鏡検査で調べることも必要になります。最終的に、場所はどこにあって、どのぐらいの深さのがんであるかを調べる必要があります。

それから、リンパ節転移があるかないかによってステージが変わってきますので、それに合わせた手術が必要になります。大腸から遠いリンパ節に転移がある場合、あるいは肝臓、肺への遠隔転移がある場合にはステージIV期という状態になり、場合によっては手術ではなくて、全身化学療法を選択する(抗がん剤治療をまず行う)こともあります。ですから遠隔転移の検索(他の臓器に病気の飛び散りがないかどうか)をきちんと調べる必要があります。

そのためにCT、あるいはもう少し精密に調べる場合にMRIを行います。特に肝臓やリンパ節への転移、あるいは病気が大腸の周りの臓器に広がっていないのかどうかを調べるにはMRIが非常に大事になります。

それから日本人の場合、胃がんが多いので、大腸がんと胃がんが両方同時にある方もそんなに珍しいことではないのですね。ですので、一般的には手術前に胃の内視鏡検査をすることをわれわれは推奨しております。

CTあるいはMRIで遠隔転移を検索しますが、画像上でわかるのは1cmを超えるような病変です。特に昔手術をしたことがあり、癒着があったりすると通常の位置に臓器がない場合があります。あるいは癒着の影響で、CTの画像上で判断することは難しい場合もあります。ですからその場合には、適宜PET、あるいはPET-CTを追加する場合もあります。PET-CTは、手術をしたあとに再発があるのかないのか、あるいはCTではわからない場所に病変がないかどうか、CT上は怪しい影であってもがんかどうか判断ができない場合に、非常に威力を発揮する検査です。」

●大腸がんの腫瘍マーカー

「それからよく話題になる「腫瘍マーカー」というものがあります。たとえば手術前に腫瘍マーカーの数値が高かったから、もう手遅れだとか、そういうことではないです。当然、数値が高い場合でも、がんをきちんととり去ることができれば、腫瘍マーカーは一般的には正常化します。

いちばん重要なのは、定期的に診ていったときに腫瘍マーカーの数値自体が下がってきているのか、高くなってきているのかということ。特に上昇してきた場合は再発が起きているかもしれない危険性が出てくるわけです。再発が見つかる場合、腫瘍マーカーは80%近く高い値を示すので、腫瘍マーカーをうまく活用すれば、術後の経過観察において、早めに再発を診断する、あるいは早めに診断するきっかけを作る、ひとつの目安になります。」

大腸がんの場合、採血をしてCEAあるいはCA19-9という腫瘍マーカーを検査します。CEAは特に感度が高く、大腸がん全体の4割ぐらいの方で高い値になります。CA19-9は少し低く2割ぐらいです。CEAもCA19-9も進行がんになると約50%を超えるぐらいの方で高い値になってきます。特に再発、あるいは遠隔転移がある場合、約8割ぐらいの方で高い値になります。ですから、この数字が高い場合には、大腸がんだけではなく、遠隔転移もあるかもしれないということを充分念頭におく必要があります。

われわれはそれを考えながら精密な検査をして、術前に適切に病気のステージング、つまりどのくらいの病状で、他に病気の広がりがないかどうかを的確に判断して、手術を行います。」

■Q & A
Q.大腸がんの腫瘍マーカーの見方は?

「CEAは5という数字が一般的な正常値の上限です。5を超えると『異常』というわけです。CA19-9は37が正常値の上限になります。

もともとずっとCEAが5以上の方もいますし、がんがあっても全然上がらない方もいます。遠隔転移があっても高い値にならない方もいらっしゃいますので、正常な範囲のなかで、たとえば右肩上がりに3回ぐらい継続して上昇している場合は、無症状で現時点ではまだ画像上でもわからないけれども、ひょっとすると再発が起きているかもしれない、ということで、まずはCTで検査することをお勧めしています。」

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