がんと向き合う

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渡 喜美代 さん
(わたり・きみよ)
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1963年生まれ。両親と兄姉5人の8人家族、自然に囲まれた環境で育つ。上京後24歳で結婚、1男2女に恵まれる。38歳のとき直腸がん(ステージ2)と子宮頸がん(ステージ1a1)が見つかり手術、人工肛門と人工膀胱を造設。放射線性直腸炎、仮性大動脈瘤破裂、腎盂腎炎などを経験するが、がん体験者の本を読んでインドの死生観に触れたことで、病気が怖くなくなる。
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10ストーマで支障なく過ごすには

「最初に一時的ストーマ(人工肛門)を造ったときは、肛門の痛みがなくなってすごく快適だったので、ストーマケアを覚えることには一生懸命でしたけど、ストーマ自体はそんなにこだわったりはしなかったですね。すんなり受け入れました。

ただ最初の頃、やっぱりにおいとか音にすごく神経質になって、1年ぐらい出かけたりしていなかったです。結構、いろいろ失敗をしたりしました。外で漏れちゃって2〜3時間歩いて帰ったりとか。冬の寒い中、外でオストメイト対応トイレがなくて、多目的トイレの冷たい水でお腹を拭いて、洋服を買い換えたりとか。そういうことも何回かありました。今は滅多にないですけど。

ケアに関して慣れてきたのもあるんでしょうね。それと多分、漏れていた時期は装具が合わなかったり、術後間もなくでまだ状態が落ち着いていなかったりというのもありますね。今は安定しています。だから自分に合った装具が見つかれば、日常生活に関しては本当に支障なく過ごせると思います。」

●ストーマは「よりよく生きるために造ったもの」

「精神的な面に関しては『何年経ってもストーマを受け入れられない』という人も中にはいらっしゃますし、もう術後すぐに自分のストーマを受け入れたという方もいらっしゃいます。それはもう個人差があるので、その人なりの時間というのがやっぱり必要なのかなとは思いますね。

日本オストミー協会(ストーマをもつ患者さんのための障害者団体)の事務局でいろいろ相談を受けていたときに、ある人が『ストーマは日常生活を阻むものではない。よりよく生きるためにストーマを造った』とおっしゃったんですね。『これはすごい』と思って、その方に『その言葉を自分自身のコンセプトとしていただいてもいいですか?使ってもいいですか?』とお聞きしたら、『どうぞどうぞ』と言われて。それからことあるごとにいろんなところでそれはお伝えしたいなと思っているんですよね。『よりよく生きるために』ってすごいじゃないですか。だから『ストーマを作ってよかった』とかそんなきれいごとを言うつもりはないですけど、今は支障なく過ごせているので、いいかなとは思っています。」