「診察室に入ると先生から『残念ながら、がん細胞がみつかりました』と言われて、『あ・・がんなのか』とすごく悲しいのですが、別に痛いわけでもなく、まだ現実的ではなかったです。先生がいろいろ説明してくださるのですが、『本当に私のことなのかしら?』という気持ちでした。先生に『今日おひとりでいらしたのですか?大丈夫ですか、ひとりで帰れますか?』と言われて、『近いから大丈夫です』と答えたのは覚えています。そうすぐには受け止められず、本当に現実なのかなという気持ちでいっぱいでした。
“がん”と言われたときに、きっと本を買ったり人に聞いたりして、いろいろ情報を集めなくてはいけなかったのでしょうが、なんだかもう自分の状態が怖くて、本を読んで自分の状態があてはまっていったり、もし転移していたらどうしようと、そういうことばかり考えてしまい、あまり情報を冷静に受け止められる自分がいませんでした。診断された日に先生から冊子をいただいたのですが、それも最初は目を通せず、やはりいろいろな検査が終わってはじめて読めたような気がします。なので1ヵ月くらいはボーッと、自分が自分ではないような生活をしていたのではないかと、今振り返ると思います。
そのあと病院に検査結果を聞きに行ったときに、『ほかに転移はない』ということと、『これなら乳房温存手術で大丈夫だと思います』と言われました。“温存”と言われたときには正直言って『あ、温存できるんだ』という気持ちと、温存すればおっぱいが残っているので、また再発という可能性はないことはないけれども、『確率的には低い』ということは言われましたので、温存できるものなら温存でいいのかなと思いました。」
「『ひとつの病院で決めてしまっていいの?今は、違う病院にも行ったりするじゃない』『ほかでも診てもらったほうがいいんじゃないの』と結構いろいろな人から言われて、妹からも言われたのですが、なんだかもうそんな気力がなかったのですね。またどこかを探して次の病院に行くという気力がまずなかったということ。あと病院の先生との相性ですが、診断をくだした先生が手術をなさるということで、この先生なら自分の手術をお任せしても大丈夫と自分が納得できる感じでしたので、もうこの病院で手術も受けようと決めました。」